病床の父から跡継ぎに認定され、財産のほとんどを受け継いだ長兄は、子どもができなかったことが原因で離婚し、その後、ひとり身のまま病死しました。相続人はきょうだいのみですが、不動産が大半で納税資金が不安なうえ、生まれてすぐ他家に養子に出され、他人も同然の弟の存在が気がかりです。どうしたら円満に遺産分割ができるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

父の財産すべてを承継した兄が病に倒れ…

今回の相談者は50代の会社員、中井弘樹さんです。定年退職後すぐに病気で亡くなったひとり身の兄、孝雄さんの相続の件でお見えになりました。

 

中井家のきょうだい構成は、数か月前に60代で亡くなった長男の孝雄さん、数年前に病没した長女の由香里さん、今回の相談者で次男の弘樹さん、三男の明さんの4人きょうだいです。じつは末弟の明さんは、生まれてすぐ遠縁の親族の養子となり、一緒に暮らした経験も、その後成長してから会ったこともなく、他人も同然の関係とのことです。

 

 

長男の孝雄さんは大学卒業後、20代後半で結婚しました。ところが孝雄さんの結婚からわずか数年後、まだ50代後半だった父親が不治の病に侵されていることが判明しました。中井さんの父親は、長男の孝雄さんが跡継ぎであるということから、不動産のすべてを相続させるよう家族に申し渡し、きょうだい全員が同意したそうです。

 

しかし、亡父から跡継ぎといわれた孝雄さんの家庭はなかなかお子さんに恵まれず、それが原因で孝雄さんの母親と折り合いが悪くなった妻は離婚。その数年後、母親も病没しました。妻と離婚した孝雄さんはその後、ずっと独り身で生活していました。そして大変残念なことに、定年退職してすぐ病気が発覚し、亡くなったとのことでした。

 

孝雄さんの財産は主に、父親から相続した不動産です。公道と公道の間に位置する、整った長方形の土地で、面積は約650坪、評価は数億円程度です。その中に自宅のほか、貸家、アパートが建ち並び、反対側はズラリと駐車場になっています。住宅と駐車場の間には少し空き地があり、畑として利用していました。

病床の兄が懸念していた「養子に行った弟」の存在

中井さんの両親はすでになく、兄である孝雄さんにはお子さんも配偶者もないため、孝雄さんの相続人はきょうだいのみです。長女の由香里さんは数年前に病死していますが、3人のお子さんがいるので、代襲相続人となる長女の子3人、中井さん、疎遠となっている養子に行った三男・明さんの5人が相続人です。

 

●相続人関係図

被相続人:長男
相続人 :長女の代襲相続人(甥姪3人)、次男(相談者)、三男(他家の養子)
資産内容:自宅、貸家、賃貸アパート、貸駐車場、現預金

 

孝雄さんがいちばん気がかりに思っていたのは、他家へ養子に入った明さんのことだったそうです。戸籍の上ではきょうだいですが、実生活では完全な没交渉であり、自分の財産を分けるつもりはないものの、当人から要求があったら対応が大変だとして、孝雄さんは自筆の遺言書を作成し、中井さんに託していました。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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