2016年1月、スリランカのシリセーナ大統領は、1978年に制定された現行の憲法を刷新し、新たな憲法を制定する憲法制定委員会設置を提案しました。新憲法に「税の公平性」を明記することを求める声が高まっています。スリランカの税体系が抱える問題についてお伝えしている連載の第2回です。

福祉サービスへの消費税課税に疑問

政府は電力を税金の控除の対象にする一方で教育や福祉を供給する民間団体に対しては、あたかも罰せられるべき奴隷であるかのごとく課税している。有料の医療サービスは高所得者が享受していることを理由にするのは間違っているだろう。どの医療施設を覗いてみても、大半の利用者は裕福とは程遠い生活をしていることが垣間見える。

 

利用者が裕福であろうとなかろうと、福祉サービスにVATを課すのはいかがなものだろうか。また、その福祉サービスの提供者が誰であるかも課税のうえでは関係ない。大衆に政局を演じてみせるより、国民を本当に慮る政治家は毎月の電力に課税し、医療分野の負担を軽減するべきだろう。

議会の機能強化で「合意なき課税」に終止符を

熟考することなく、そして確かな根拠を欠いた政策のもとで税が課されてしまうのは、そもそも課税に国民の同意を求めてこなかったためだ。多くの税が知らぬ間に議会の同意なく課されている。国民の自由を育み、支配者の専制を抑える手段として西洋で発展を遂げた議会制度は、スリランカにおいては安易な承認装置に過ぎないのだ。

 

議会制民主主義の端緒となったマグナ・カルタに、イングランドのジョン王が署名するよう強いられたのは、議論なしに一連の税を課したからだ。1689年に成文化された権利の章典は、イギリスの不成典憲法を構成する一部だが、イングランド王ジェームス二世が権力濫用した後に「議会の同意なき課税の禁止」という原則を再確認し、国王大権による課税に終止符を打った。しかしスリランカでは、国民に隠れてこっそりと、財務大臣が特権をふるって課税を続けている。


次回は、VAT課税の導入を巡るスリランカ内閣の事情などについてご説明します。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2016年5月に掲載した記事「END THE ELECTED ARISTOCRACY」を、翻訳・編集したものです。

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