日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「生活保護」。新型コロナウイルスの終息がまだ見えないなか、生活に困窮する人が増え、生活保護を申請する人も増えていくと考えられます。生活保護の受給者の現状をみていきましょう。

生活保護受給者…全国で161万5357人

また自己破産のほかにも、生活に困窮している人を支援する制度として、生活保護制度があります。世帯収入が最低生活費より少ない、保有資産を活用しても生活できない、病気などで働けないなどの要件を満たしていれば、理由は関係なく申請ができます。

 

生活保護には以下、8つの扶助があります。必要に応じ、これらが支給されます。

 

1.生活扶助

2.住宅扶助

3.医療扶助

4.教育扶助

5.介護扶助

6.出産扶助

7.生業扶助

8.葬祭扶助

 

さらに状況に応じて、「障害者加算」や「母子加算」などの加算があります。

 

保護要件には「資産の活用」がありますが、持ち家には住み続けることができます。ただしローンが残っているなどの場合は、売却が必要なケースもあります。また公共交通機関の利用が困難で、生活するのに必要不可欠な場合を除き、基本的に自動車の保有も認められないケースが多いようです。また宝石などの貴金属なども処分を迫られるケースがあります。

 

このような生活保護ですが、厚生労働省の「平成30年度被保護者調査」によると、161万5357人。被保護者世帯の世帯主の平均年齢は64.9歳。年齢階級別にみていくと、「80歳以上」が最も高く、全体の16.8%。「65~69歳」で14.6%、「70~74歳」が14.1%、「75~79歳」が12.6%となっています。年金受給年代の困窮ぶりが際立っています。

 

また扶助の種類は、「生活扶助」を受けている人が89.6%、「住宅扶助」は85.0%、「教育扶助」は4.8%、「介護扶助」が12.1%、「医療扶助」が90.1%、「その他の扶助」を受けているのが2.0%となっています。

 

平均金額に注目していくと、「最低生活費」12万2419円、そのうち「生活扶助」は8万7389円、「住宅扶助」は3万6468円、「教育扶助」は1万4219円、「出産扶助」は2万30295円、「失業扶助」は1万6042円、「生業扶助」は1万6042円、「葬祭扶助」は1万95903円となっています。

 

さらに地域別に生活保護の実態をみていきましょう。生活保護を受けている人の割合は、全国では1.26%。そんななか最も対人口比で生活保護を受けている人が多いのが「東京都」で1.63%。大都会・東京に潜む貧困層の厚さを物語っています。続いて「徳島県」で1.39%。「沖縄県」1.27%、「青森県」1.03%、「北海道」1.03%、と続きます(図表2)

 

出所:厚生労働省の「平成30年度被保護者調査」より作成
[図表2]都道府県別「生活保護(対人口比)」上位10 出所:厚生労働省の「平成30年度被保護者調査」より作成

 

一方で最も生活保護を受けている人が少ないのが「富山県」で0.13%。「広島県」「岡山県」0.2%、「岐阜県」0.21%、「石川県」0.22%と続きます。

 

全国平均を上回るのが上位3都県だけということを考えると、生活保護層の東京一極集中という構図が見てとれます。

 

厚生労働省は生活保護制度について「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずに自治体までご相談ください。」としっかり明記しています。とはいえ、日本の社会保障制度の多くは「申請制」。自分から調べ、困窮者自らが足を伸ばすことが前提条件です。

 

コロナ禍を乗り切るためにも、正しい情報の発信・収集がより一層求められています。

 

 

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