国民の約10人に1人は分譲マンションで生活している今、マンションに住む人たちは大きな危機に瀕している。老朽化と大規模修繕、管理組合との付き合い、住民の転居と高齢化……。マンション購入時には明かされない課題を解説。 ※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンライン掲載の書籍『分譲マンション危機』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

築60年マンションにたった1人で住み続けた住人の悲鳴

◆ゴーストマンション症状の状況に陥ってから住めるのはせいぜい15年~20年

 

スラム化の状況に陥ってから、どうにか住めるのはせいぜい15年~20年と考えています。その後は住めない。住めても廃墟に住んでいるようなものでしょう。

 

一例ですが、雑誌『日経アーキテクチュア』に掲載されていたことを紹介します。東京渋谷の某マンションで、建替えが決まり1人を除いて全員が退去されたのですが、居残った1人の区分所有者によれば、配水管は漏水事故が相次ぎ、電線は布巻きでいつ漏電や発火事故が起こってもおかしくない状態だった。築60年を超えた老朽マンションにたった1人で住むということは、経験した人でなければ分からない。特に、最後の3年間は精神的にきつく、とにかく大変だったと、書かれていました。

 

最後の3年は地獄でした。
最後の3年は地獄でした。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

この例は極端かも知れませんが、ゴーストマンションの状況になると、雨漏りや給排水管からの水漏れが起こり、電気、水道、ガスは料金の支払いがあれば止められないかもしれませんが、事故の発生リスクが高く、各供給側も、これらのリスクに対して身構えることになると思われます。安全面や衛生面でリスクがあるからです。防災や防犯など社会的にも、迷惑を掛ける建物になります。

 

建物は、ただ立っているだけのゴーストマンション状態でも、行政は解体や解決のための金銭的な支援はしてくれません。マンション管理について行政に相談を持ち掛ければ、相談対応はしてもらえるとは思います。

 

建物の老朽化は進み、あたかも都会の中の軍艦島状態です。入居者も、色々な事由で転居していき、居住する住民は数戸に留まることになります。賃貸化が進みマンション内の秩序は低下し、非管理状態(管理組合の自然消滅、総会・理事会なし)に近づいていきます。国民の生活水準から見ても疑問を呈する状態になります。

 

そしてやがて、管理費や修繕積立金の徴収もなしの状態になります。非居住戸や空き住戸(相続人なし状態や所有者の連絡先不明状態)、抵当権ありの状態での所有者夜逃げ不明、新聞、電話、水道、電気、ガスの手続き放置、高層マンションでは、エレベーターの維持管理も十分ではなくなった時、安全面でも危険に晒される状態になります。

 

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分譲マンション危機

分譲マンション危機

小林 道雄

幻冬舎MC

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