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バイデン大統領就任:米国民に結束を訴える一方で、トランプ政権との違いも鮮明
民主党のジョー・バイデン氏が2021年1月20日、米国の第46代大統領に就任しました。就任演説で米国民、米国の団結を強調し、トランプ前大統領の下で国内に広がった分断の修復を訴えました。
バイデン新大統領は就任後、気候変動問題へ取り組むための文書に署名しました。地球温暖化対策の国際的な取り決めであるパリ協定へ米国が復帰する動きです。なお、バイデン大統領は米国のパリ協定復帰を国連に通知しており、約1ヵ月後の復帰が見込まれます。バイデン大統領はこれ以外にも17本程度の大統領令に署名したと報道されています。世界保健機関(WHO)からの脱退手続きの撤回や、イスラム圏からの入国制限の撤廃なども指示しており、トランプ前大統領との政策の違いも鮮明となっています。
どこに注目すべきか:バイデン大統領、就任式、ワクチン、インフラ
就任式を無事に終えたバイデン大統領は米国民の結束を訴える一方で、就任初日から、大統領令に署名してトランプ政治から決別する姿勢を示しています。バイデン大統領のこれまでの発言や、政権チームに指名した閣僚などの顔ぶれから、今後の展開を占います。
まず、当初最も注力する政策は新型コロナウイルス対応と見られます。米国が直面する最も深刻な問題のひとつであるうえ、比較的共和党の協力も得られやすいと思われます。具体策のひとつに、バイデン大統領は就任100日後の4月末までに1億回分を接種する目標を掲げています。トランプ政権が20年末までに2000万人のワクチン接種を目指しましたが達成率は約2割にとどまりました。
なお、米疾病対策センター(CDC)によると、足元でのワクチン接種は約1650万人となっています(図表参照)。一方で配布は約3600万回分となっており、ワクチン接種の問題はワクチン生産など供給もさることながら、接種のプロセスに改善が必要なようです。ただ、ワクチン接種の最終権限は地方自治体が抑えており、バイデン政権の対応には難しい面も想定されます。それでも今後はワクチン接種の達成率に注目する展開が想定されます。
次の注目は中長期的経済政策です。「米国救済計画(ARP)」と名付けた総額1.9兆ドル規模の財政政策は現金給付や失業保障など新型コロナウイルス対応が色濃い経済政策と見られます。
一方、インフラ投資(含む気候変動対策)などの政策については2月中にも提出が見込まれる22年度の予算教書に含まれる可能性があると思われます。先のARP法案は規模を縮小させて、失業対策などに絞って3月頃を目処に成立を目論む一方、市場では4年で2兆ドル程度が想定されているインフラ投資の法案は遅くとも年内成立が目処となると思われます。
財政政策の司令塔にはイエレン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長が候補に指名されています。閣僚の承認は遅れていますが、ジョージア州の上院議員選挙で当選した民主党議員が20日に加わったことで今後はスムーズになることも期待されます。財務長官候補のイエレン氏は指名公聴会で財政政策拡大について支持する姿勢です。
金融政策を担当するFRBのパウエル議長も財政政策については直接の関与は出来ないにしても支持する考えと見られます。バイデン、イエレン、パウエル(トランプ氏がFRB議長に指名していますが)は馬が合いそうです。
ただ問題は議会です。インフラ投資などは歳出の中では裁量的歳出に分類されると見られます。非裁量的歳出のような手段で過半数により法案を通すことが(上院で)困難で、共和党の協力が必要です。その場合武器となりえるのが今後の支持率の上昇で、まずはコロナ対策の成果が問われそうです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『バイデン新大統領に期待する2つの政策』を参照)。
(2021年1月21日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
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