先進国の不動産市場サイクルは長く、他の投資に比べて市場サイクルの予測が立てやすいといわれています。第26回コラムでは、市場サイクルに影響を与える5つの要素のうち、2つの要素についてベルリンの事情を解説しました。今回は、残りの3つの要素について見ていきます。

インフレよりも需給関係がポイントとなるベルリン

第26回コラム(こちらを参照)では、不動産市場サイクルに影響を与える重要な5つの要素のうち、「需要と供給」「賃料」という2つの要素について解説していきました。今回は、残りの3つの要素である「インフレ」「経済情勢」「スペキュレーション」について見ていきます。

 

 

3. インフレ

自然現象と言われるインフレは、賃料、また不動産価格に影響します。そして賃料上昇はすなわち不動産価格上昇につながります。

 

例として、100㎡のアパートについて考えてみましょう。

 

テナント① 一ヶ月の賃料1,000ユーロ

テナント② 一ヶ月の賃料1,500ユーロ

 

このアパートの持ち主が物件を売りに出す際、テナント①よりもテナント②の方が、アパートとしての価値が高くなります。それは、物件を買う側は通常、その物件賃料による利回り(インカムゲイン)に着目するからです。

 

このように、インフレは家賃上昇を通じて不動産価格と関係していることが分かります。一方、インフレは、家賃上昇(ひいては不動産価格の上昇)の背景にある数多くの要素のひとつにすぎない、というのは大切なポイントです。現在のベルリンにおいて、インフレは主要な要素ではありません。第26回コラムこちらを参照)でも「需要と供給」を取り上げましたが、ベルリンは生活する街として非常に人気が高いため、現在の市場サイクルに影響を与える要素としては、需要と供給の方が、インフレよりも影響力が大きいと言えるでしょう。

飛躍的に成長を遂げた「東西統一後」のベルリン経済

4. 経済情勢

ドイツ経済の強さについてはここで詳しく触れませんが、以下、ベルリンの経済情勢について見てみましょう。

 

東西ドイツ再統一まで、ベルリンは分割された都市でした。東ベルリンは貧しく、投資対象もほぼ存在していませんでした。東側諸国、また東ドイツの最も重要な経済的パートナーだったソビエト連邦と同様、東ドイツ経済も崩壊の一途をたどっていました。

 

西ベルリンは、東ドイツの中の政治的な孤島という特異な立場にあり、東ベルリンと同様貧しく、投資も活発ではありませんでした。また西ベルリンはロシア軍に囲まれていたため、西ベルリンの資産はリスク資産と考える投資家が多かったのです。

 

ドイツ再統一により、ベルリンもまた一つの都市に戻りました。そしてその政治的地位と経済的力も著しく変化しました。数多くのプロジェクトが行われ、ベルリンの経済が強化してゆくと同時に、投資家達の関心がベルリンに集まり始めました。1990年代以降、ベルリンの不動産市場は大規模なブームを迎えます。大学・研究・医療関連施設や、スタートアップ・IT・サービス企業などの成長産業、そして製造業関連の不動産に巨額の投資が行われました。

 

これらの動きから分かることは、ドイツの他都市と比べて経済的に弱い街とされていたベルリンが年々その経済力を強め、ドイツ国内における重要性を増してきたということです。ベルリン経済の底力は、一般的な物価や給与額、ひいては着実に上昇を続ける家賃の支払能力にもつながっています。これはまた、不動産価格上昇にポジティブな影響を与えています。

数年後の値上がりを見据えて投機的な価格が付くことも

5. スペキュレーション

需要と供給の法則により、商品が少なくなるほど売り手の交渉力は高まります。これが、ベルリンの現在の状況です。ベルリンは、売り手市場です。強い交渉力を行使して、物件の販売価格を投機的な範疇へと押し上げている売り手が存在しています。

 

そのような売り手は、2018年時点で高いレベルになるだろう賃料レベルの憶測に基づいて2016年に販売する物件の価値を決めることもあり得ます。トップロケーションの不動産には、こういった投機的な価格でも購入したい買い手がいることを知っているからです。

 

投機的価格設定が、ベルリンの不動産市場をホットにさせている要因のひとつです。人気エリアでは2016年から2018年にかけ不動産価格が30%から40%近く上昇すると見ている専門家もいます。

 

この種の成長圧力は、ベルリン不動産市場サイクルが数年後にはクールオフへ向かうことを示唆しています。このクールオフ期間は、2019年から2025年の間、どの時点で始まっても不思議ではありません。

 

クールオフといっても、ベルリンの不動産価格が上昇を止めるということではありません。この期間であってもおそらく、年間3%~10%の価格上昇は着実に続くでしょう。これは、価格評価が現在の賃料レベルと釣り合っていない物件もある、という意味でしかありません。賃料レベルが物件価格の評価と釣り合うまでには、ある程度の時間を要するのです。

 

良いニュースは、投機的な物件価格ゾーンへ押そうとする売り手はまだ少数だということです。好条件で良心的な価格の不動産物件は、ベルリンにはまだまだ豊富に存在しています。

 

 

ポイントは、そういった物件をどのように見つけるか、ということです。そのサポートをさせていただくのが、弊社の役割です。ベルリン不動産市場サイクルを仔細に見た上で、投機的価格設定によるクールオフの先回りをすることが得策と考えます。

 

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