不動産価値のサイクルは緩やかで予測可能!?
一般経済と同様、不動産価値も市場サイクルの影響下にあり、常に変動を続けています。
不動産市場サイクルは通常、緩やかで予測可能なサイクルを描きます。不動産投資が比較的安全な投資と考えられているのは、このためです。数ヶ月間で劇的な変動を見せるスマートフォン製品市場などとは異なり、不動産市場サイクルは通常、その期間が年単位、あるいは数十年単位となっています。
新興国における新しい不動産マーケットが過剰な注目を集めたり、不注意な融資に端を発する市場崩壊(リーマンショック参考)など、いくつかの例外も存在しますが、一般的に不動産市場は十分な予測が可能です。また、ベルリン不動産市場は 資産運用会社や投資家達から「Cement Gold (セメント・ゴールド)」とも呼ばれています。
今回から2回に渡り、不動産市場サイクルに影響を与える重要な5つの要素を見ていきたいと思います。
不動産価値を決める最大の要素は「収益性」
1. 需要と供給
不動産市場における需要と供給のバランスを決定するのは、市場に出ている商品の数と投資家(潜在的買主)の数です。
例えば、パリやロンドン、ニューヨーク、東京といった都市の一等地では、一平米あたりの価格は極めて高くなります。その価格は、土地や建築物の実態価値に左右されるものではなく、予測価値、間接的価値と呼ばれるものに100%影響されています。例えば、東京渋谷の109ビルに入っている3坪のテナント賃料は、そのビルが建つ土壌の質や建物自体の質ではなく、そこで販売される商品のハイレベルな潜在的売上げ(収益)が生み出す間接的な価値によって正当化されています。
このように、あらゆる不動産は様々な間接的価値を有しています。その中で最も重要なのが収益です。不動産からの収益源は賃料や、そこで行われる生産活動、商品の販売などです。これらが、不動産の間接的価値です。
また、より抽象的な価値は投影価値です。その好例が高級不動産物件です。高級不動産物件は、購入者の思い描くQOL(暮らしの質)であったり、「相応しいエリア(社会的地位への意識)」といった抽象的な価値を投影するものです。
経験豊富な投資家が注目するエリアとは、人気上昇一歩手前のエリアです。そういったエリアの販売価格はまだ比較的安いですが、インカムゲインとキャピタルゲインの将来的な期待値は高いです。ベルリンで過去この流れを経てきたエリアは、プレンツラウアーベルク、ノイケルン、ベルクマン通り、ポツダマープラッツなどです。
年に10%以上賃料が上昇しているエリアも
2. 賃料
市場サイクルに影響を及ぼす興味深い要素は、賃料上昇を働きかけるプレッシャーです。例えば、ある期間内で賃料上昇率が年0.5%~1%と非常に低いエリアがあります。一方、年5%も賃料上昇するエリアも存在します。また究極の例では、人気が急上昇したエリアで、リフォーム後入居する新しいテナントの賃料が、以前20年間住んでいたテナントの倍(上昇率100%)となる都市もあります。
ベルリンでは1990年代前半まで、賃料が非常に低いレベルで推移していました。その後、年に2%~5%と急上昇を見せます。人気の高いエリアでは、その上昇率がさらに高く、この傾向は過去10年間で特に顕著です。新しく入るテナントがエリア平均よりも高い賃料を払っていることによる影響も合わせ、それら人気エリアでは賃料が年に10%以上上昇している場所もあります。
下記の図をご覧ください。ベルリンでは、新しい賃料(新テナント賃料)が過去6年間に90%を超えて上昇している地域もあります。
不動産の市場サイクルは予測可能とはいえ、対象時間枠が長くなればなるほど正確な予測が困難になります。ですが、ベルリン不動産価格が着実に上昇していることは、豊富なデータに裏付けられており、2018-2019年頃までの価格上昇予測は、かなり正確に出すことができます。
一方、上昇傾向が強いマーケットには概して、売り手側のスペキュレーション(※)というリスクも潜んでいます。この要素については、次回の連載でさらに詳しく見ていきますが、ここで大事なポイントは、ベルリンの不動産価格が今から2~3年後、このスペキュレーションに影響された価格に転じる可能性を考慮すべきだということです。
また、好条件で上質な物件の多くが、現在より30%~40%価格上昇するであろう2018年頃まで待っているのは得策ではありません。この上昇率を味方に付けられる2016年の今は、ベルリン不動産の買い時だと考えられます。
次回は、残りの3つの要素について引き続き見ていきたいと思います。
※スペキュレーション
いわゆる投機的取引。短期的な売買を主体に利益を得ようとする行為。