「音楽の持つ力」に生きがいを感じる人が増えている
筆者自身、ヤマハの音楽教室に通っており、演奏者人口のすそ野が広がっている事実を日々肌で感じています。
ヤマハでは、教室に通う生徒たちがバンドを組んで公開演奏する「バンドライブ」というイベントを行っています。Jポップやフォーク、ロック等の曲目の中から、好きな一曲を選び、それを生徒たちがふだん習っているピアノやギター、ベース、ドラムなどのパートを担当する形でバンドを結成し、みなの前でライブをする催しです。
ひと昔前までは途切れ途切れに開かれている状況だったのですが、2014年に行われたバンドライブがこれまでになく盛況だったことから、それから1年と経たず2015年7月に行われることになりました。
バンドという形で楽器演奏を楽しむ人が数を増していることの一つの表れといえるのではないでしょうか。
この「バンドライブ」に参加している人たちの年齢は、下は10代から上は90代までと実に多世代にわたっています。
私の参加したバンドにも、30代から60代の方がメンバーとして加わっていました。ビジネスシーンならともかくプライベートな場面で、このように何十歳も年の離れた異世代間の交流を楽しめる機会はなかなかないものです。
そもそも世代が異なると、互いの価値観やライフスタイルも違うために話があわず、コミュニケーションそのものが取りづらいこともあります。
しかし、バンド仲間とは楽器演奏という共通の趣味で結ばれているので、会話が弾み互いの心が通い合うのを感じることもできます。このような濃密な人とのつながりを得られることに得難い魅力を感じてバンド活動に情熱を傾けている人が、私の周りでも多いように思われます。
また、楽器演奏の経験は、このような世代を超えて人とのつながりをもつ機会や喜びを与えてくれるだけではなく、日々のレッスンを通じて技術的に向上し、好きな曲を自由に弾けるようになるという満足感、達成感ももたらしてくれます。
今、楽器を演奏する人の数が増えているのは、そのような〝音楽のもつ力〞に魅力やさらには生きがいを感じている人が増えているからなのかもしれません。
中学校における「ダンスの必須化」も追い風に
なお、将来的な演奏者人口の増加につながると思われる要因の一つとしては、中学校におけるダンスの必修化があげられます。平成20年3月に学習指導要領の改訂が行われ、中学生はみな授業でダンスを学ぶことになりました。
具体的には「創作ダンス」「フォークダンス」「現代的なリズムのダンス」の3種類のダンスが指導されます(踊りを通して仲間と交流することでコミュニケーションを豊かにできることや、踊りという自己表現を通じて楽しさや喜びを味わうことができる点に教育的効果が認められたようです)。
この中学校におけるダンスの必修化により、目下、ダンスを始める人が増えており、それに伴いダンススタジオの数も急増しています。
いうまでもなく、ダンスは何よりも音楽と密接なつながりをもっています。そのため、ダンスをきっかけに音楽そのものに興味をもち、さらにはそこから「何か楽器を演奏してみようか」と考える人も増えることが予想されます。
風が吹けば桶屋がもうかる――ではありませんが、そうなれば楽器可防音賃貸マンションのターゲット層が、さらに拡大していくことは間違いありません。