グローバルに事業展開する企業に、財務・法務・労務人事に特化したアウトソーシングサービスを提供するTMFグループ。世界最大規模のトラスト専門事務所としても知られる。その香港拠点となるTMF香港リミテッドの取締役で、プライベート・クライアント・ヘッドを務めるアンドリュー・ホー氏に、昨今注目を集める「オフショアトラスト」の仕組みや活用方法などを伺った。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウエルス・リミテッド(NWB/日本ウエルス)の長谷川建一COOである。最終回は、オフショアトラスト設定の具体的なポイントを取り上げる。

「トラスト」設定まで2年近くかかったケースも…

長谷川 トラストを設定するまでに細かい確認作業を行う必要があるということでした。時間がかかる作業だと思いますが、通常どのくらいかかっているんですか?

 

 

アンドリュー そうです。受託者だけでなく、法律や税の専門家を交えてトラストの仕組みを説明し、決定事項を書面化し、その書面を弁護士に確認してもらうなど、設定までに様々な過程を経ます。設定までの期間は、個々のケースがどの程度複雑かによって差が出ます。私が担当したケースでは、今まで、3週間で設定したこともあれば、2年近くかかったこともあります。

世代を超えて付き合うことも想定して受託会社を選ぶ

長谷川 では、トラストを設定する際、どのような点に気をつけて受託者を選べばいいか教えて下さい。

 

アンドリュー 口座を開設したい人が銀行を選ぶように、個人のニーズや好みによって違ってくるかと思います。ブランドイメージで名の知れた受託会社を好む人もいれば、小規模で個人経営的な組織のほうが柔軟な対応が期待できると考える人もいるでしょう。また、資産の種類によって、美術品を得意分野とする会社もあれば、そもそも取り扱っていない会社もあります。自分のニーズに見合う専門的な知識を持っているか、長期に渡り質の良いサービスを提供してくれそうか、会社としてある程度の資産残高を管理しているかなどを総合的に見て、信頼できるパートナーとなり得るかどうか判断すべきでしょう。親子間の資産継承目的では付き合いが少なくとも1世代を超えるかもしれませんから、長く親密なお付き合いとなります。アドバイザーとして家族のことをより深く知るほうが、さらに良いサービスが提供できるので、信頼関係は非常に重要です。例えば、受益者である子供の一人がギャンブルに手を出しやすいと分かれば、その子供が受け取れる金額を変えるなど、なんらかの対策をアドバイスすることもできます。そういう細かな点まで共有できる信頼関係があるかないかで大きく違ってきます。

 

長谷川 アドバイザーとして、アンドリューさんは何年くらいこのお仕事をされていますか? また、お一人につき、何人くらいのクライアントを担当されていますか?

 

アンドリュー 私は15年ほどお客様の資産管理におけるアドバイス業務を行っています。私のチームでは、一人につき50から100人程度のお客様を担当しています。お客様の資産のサイズも異なりますし、資産を多く持つ人ほど預けるモノの種類も多岐にわたり、受託者としての業務も複雑になります。お客様の目からは私達アドバイザーしか見えていないことが多いのですが、実際には他にたくさんの人が係わっています。トラストの事務手続きを行う部署、会計、税の専門部署、法律の担当者、私達アドバイザーは社内・社外を問わず関係者全てをとりまとめる指揮者のような役割です。

 

 

長谷川 日本の方もトラストを設定している方はいらっしゃいますか? 税対策として有効活用できるのでしょうか。

 

アンドリュー 日本の方もいらっしゃいますが、他の国と比べると数は少ないです。前述の通り、私達は厳しい法規制の元で運営しています。日本の方であれば、当然、日本の法に従うことが前提です。開示義務など様々な規制に従った上で、税金だけでなく総合的に見てどの程度のメリットがあるか、トラスト設定に係るコストも鑑みて、そのクライアントのニーズに合うサービスが提供できるかどうか検討する必要があります。

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、TMF香港リミテッドおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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