米バイデン政権「ブルーウェーブ」の死角

1月5日の米ジョージア州における上院決戦投票の結果、米民主党が大統領選と上下両院を制する「ブルーウェーブ(青い波)」となった。この結果、バイデン次期米大統領が掲げる積極的な財政政策が連邦議会で成立しやすくなるとの見方から、株式市場は上昇基調が続いている。しかし、民主党の法案が全て成立するわけではないので注意が必要だ。※投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、DEEP INSIGHT。本連載では日々のマーケット情報や政治動向を専門家が読み解き、深く分析・解説します。

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議事妨害(フィリバスター)を阻止するには60議席が必要

上院の定数は100議席であるため、51議席あれば過半数を獲得したことになる。今回の選挙では民主党50議席、共和党50議席となったため、これだけではどちらも過半に届かないわけだが、上院の議決で票数が同数となった場合は、カラマ・ハリス次期副大統領が決定票を投じることができるため、実質的に民主党が過半を獲得したことになる。

 

※上院の議決で票数が同数となった場合は、民主党の次期副大統領カラマ・ハリス氏が決定票を投じる 出所:各種報道を基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]2020年米大統領選・連邦議会選の結果 ※上院の議決で票数が同数となった場合は、民主党の次期副大統領カラマ・ハリス氏が決定票を投じる
出所:各種報道を基にピクテ投信投資顧問作成

 

しかし、上院では議員の発言時間に制限が設けられていないため、議会終了まで審議を引き延ばし、法案を議事妨害(フィリバスター)することが可能になる。これを阻止できるのが討議終結決議(クローチャー)であり、60議席以上の賛成を得る必要があるが、民主党の議席はこの60議席には及ばない。つまり、民主党の法案を通すためには超党派での合意が不可欠になる。

「財政調整措置」を使用すれば民主党単独で可決することも可能だが…

その一方で、予算決議において「財政調整措置」と呼ばれる制度を活用すれば、(歳入・歳出に関するものであれば)民主党単独で法案を通すことは可能になる。しかし、「財政調整措置」は一会計年度につき一度しか使用できないほか、民主党内での調整も必要になる。

 

バイデン政権下で「予算調整措置」を主導するのが、新上院予算委員長に指名された急進左派のバーニー・サンダース上院議員だ。サンダース氏は米メディアのインタビューに対し、「財政調整措置」を積極的に活用する方針を発表しており、新型コロナウイルス対策や景気刺激策に加え、インフラやクリーン・エネルギー政策などをまとめることに強い意欲を示した。

 

ここでカギを握るのが、民主党内における中道派のジョー・マンチン上院議員とキルステン・シネマ上院議員、ジョン・テスター上院議員の動向だ。「財政調整措置」においてあまりにも左派的な法案になってしまうと、中道派の民主党議員らが廃案に持ち込む可能性があるからだ。特にマンチン氏は石炭産地であるウェスト・バージニア州の上院議員であるため、気候変動対策を含めた法案については反対の立場を取りやすい。「財政調整措置」の発動には、民主党内における融和が不可欠になる。

 

出所:ピクテ投信投資顧問作成
[図表2]注目の米民主党上院議員 出所:ピクテ投信投資顧問作成

1月14日にはバイデン次期大統領が追加景気対策案を発表予定

バイデン次期大統領は、1月14日に追加景気対策案を発表する予定となっている。報道では2兆ドル規模になるとも言われているが、予算の権限はあくまで連邦議会にあるため、次期大統領の発言よりも連邦議会の審議を見守る必要がある。分断された民主党をうまくまとめることができるか、バイデン次期大統領の手腕が試される。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米バイデン政権「ブルーウェーブ」の死角』を参照)。

 

(2021年1月14日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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