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議事妨害(フィリバスター)を阻止するには60議席が必要
上院の定数は100議席であるため、51議席あれば過半数を獲得したことになる。今回の選挙では民主党50議席、共和党50議席となったため、これだけではどちらも過半に届かないわけだが、上院の議決で票数が同数となった場合は、カラマ・ハリス次期副大統領が決定票を投じることができるため、実質的に民主党が過半を獲得したことになる。
しかし、上院では議員の発言時間に制限が設けられていないため、議会終了まで審議を引き延ばし、法案を議事妨害(フィリバスター)することが可能になる。これを阻止できるのが討議終結決議(クローチャー)であり、60議席以上の賛成を得る必要があるが、民主党の議席はこの60議席には及ばない。つまり、民主党の法案を通すためには超党派での合意が不可欠になる。
「財政調整措置」を使用すれば民主党単独で可決することも可能だが…
その一方で、予算決議において「財政調整措置」と呼ばれる制度を活用すれば、(歳入・歳出に関するものであれば)民主党単独で法案を通すことは可能になる。しかし、「財政調整措置」は一会計年度につき一度しか使用できないほか、民主党内での調整も必要になる。
バイデン政権下で「予算調整措置」を主導するのが、新上院予算委員長に指名された急進左派のバーニー・サンダース上院議員だ。サンダース氏は米メディアのインタビューに対し、「財政調整措置」を積極的に活用する方針を発表しており、新型コロナウイルス対策や景気刺激策に加え、インフラやクリーン・エネルギー政策などをまとめることに強い意欲を示した。
ここでカギを握るのが、民主党内における中道派のジョー・マンチン上院議員とキルステン・シネマ上院議員、ジョン・テスター上院議員の動向だ。「財政調整措置」においてあまりにも左派的な法案になってしまうと、中道派の民主党議員らが廃案に持ち込む可能性があるからだ。特にマンチン氏は石炭産地であるウェスト・バージニア州の上院議員であるため、気候変動対策を含めた法案については反対の立場を取りやすい。「財政調整措置」の発動には、民主党内における融和が不可欠になる。
1月14日にはバイデン次期大統領が追加景気対策案を発表予定
バイデン次期大統領は、1月14日に追加景気対策案を発表する予定となっている。報道では2兆ドル規模になるとも言われているが、予算の権限はあくまで連邦議会にあるため、次期大統領の発言よりも連邦議会の審議を見守る必要がある。分断された民主党をうまくまとめることができるか、バイデン次期大統領の手腕が試される。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米バイデン政権「ブルーウェーブ」の死角』を参照)。
(2021年1月14日)
田中 純平
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト
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