「センター試験」から「大学入学共通テスト」へ
大学入試センター試験(以下センター試験)は2020年の1月実施を最後に廃止となり、2021年の1月から「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)が導入されます。
グローバル化の進展やAI、ICT、ロボットなどの技術革新に伴って社会は大きく変わり、少子高齢化による生産年齢人口の急減は必至です。時代とともに必要な能力は変わってくるため、入試改革が行われることになったのです。
では、大学入試はどう変わるのでしょうか。新しい制度では、センター試験で問われていた「知識・技能」に加え、「思考力・判断力・表現力」、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」の3要素が求められる入試になります。
「センター試験」に代わる「共通テスト」では、全科目で「知識・技能」だけでなく「思考力・判断力」を重視する出題になります。入試制度が変わることは多くの受験生にとって負担であり、不安を抱く人も多いでしょう。2018年11月に実施された試行調査(プレテスト)の出題傾向とともに、新入試について解説していきます。
全科目のマークシート式方式で出題傾向が変化
共通テストでは「思考力・判断力」を問うため、すべての科目でマークシート式問題の改善が行われます。今までのセンター試験で主に求められていたのは、知識・技能でした。しかし、共通テストでは、複数の文章、資料、会話文などを読み取り、情報を統合し、考察する力が必要とされます。
2018年度の試行調査では、複数の文章、資料、会話文などが扱われる問題が全科目で増加し、そこから必要な情報を抽出し、情報のつながりを理解したうえで推測したり、総合的に考察したりするなど「思考力」「判断力」を問う出題が多く見られました。また、資料をもとに考察を深めていくタイプの問題だけでなく、ある「主張」に対して「前提となる事実」や「主張の根拠として適切な資料」を選択させるなど、新形式の設問も見られました。
さらに社会や実生活とのかかわりを意識した出題が増加したことも特徴です。試行調査ではすべての科目で社会や実生活とのつながりのある題材が取り入れられました。
また、「正しいものをすべて選べ」など、当てはまる選択肢をすべて選択させる問題や、「解なし」の選択肢を解答させる問題など、従来にない問い方や解答形式の問題も多く見られました。ですから、これまでの消去法などのテクニックは通用しなくなるわけです。
例えば2018年度の試行調査の英語では、第2問Aはインターネットに掲載された料理レシピやその写真から、説明文の要点を捉える力や、情報を事実と意見に整理する力などを問う出題でした。第2問Bは「学校における生徒の携帯電話使用の是非」についてディベートの準備をする場面で説明文を読み取り答えさせる問題であり、実生活につながるような設定になっていました。
他にも市のウェブサイトや学園祭に関するブログを読み取るなど、扱う英文素材が説明文や物語文ばかりでなく、日常的に接する機会が多い素材が取り上げられており、また英文量も多くなっていました。
さらに、第4問では生徒の読書習慣について書かれた複数の記事やグラフから、書き手の意図を把握したり、必要な情報を抽出する力が問われたり、第6問Aでは授業で行うグループ発表の準備場面で、アジアの女性パイロットに関する記事を読み取り、答えを導き出すという出題もありました。人の考えをきちんと理解し、それをいかに分析して答えを出すかなど、より実生活で使える英語を重視しているだけでなく、いかに使うのかまでを評価する内容になっています。
リスニングも単に聞き取るだけでなく、複数の情報を比較して判断したり、英語での議論を聞いて要点をまとめたりするなど、思考力・判断力が求められる内容になっています。さらに、第4問から第6問は、1回のみの聞き取りで長めの長文の内容を把握する必要があります。その中で社会的な話題などに関する講義を英語で聞いて図表やワークシートを完成させる出題や、聞き取りと並行して多くの情報を読解して答えさせる出題などがありました。これらの出題では、多くの情報の中から必要な情報を聞き分け、素早く判断することが求められていました。
深い理解を伴う「思考力」「判断力」を問う出題は理科(物理・化学・生物)でも顕著に見られます。例えば、身近な現象や題材をもとに実験考察力を問う出題や、実験結果に関する説明が科学的に正しい考察になるような選択肢を選ばせる出題などがありました。また、1つの大問内に複数の分野の内容が含まれる出題や、多くのデータや情報を読み取って活用する出題も多く、知識だけでなく与えられた情報をいかに処理するかといった読解力・思考力・判断力が問われます。
先ほども述べたように、共通テストではすべての科目において複数の情報を組み合わせて判断・思考する必要があり、暗記中心の勉強だけでは通用しません。
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