医学部受験の失敗…偏差値だけで受験大学を決める
同じ医学部でも出題傾向は大学によって大きく異なる
自分が目指したい大学、行きたい大学にこだわることが最も大切であることは間違いありません。しかし、どうしても一年でも早く医学部に合格したいと考える受験生がいることも理解できます。その場合は、自分にとって合格しやすい大学という点も視野に入れて、戦略的に準備を進めていく必要があります。
同じ医学部でも出題傾向や出題形式などは、大学により大きく異なります。問題自体の難易度、試験時間に対する問題量、頻出分野、出題形式、配点など、大学ごとの特徴を踏まえ、自分の学力特性との相性を考えて受験大学を決めることになります。
受験大学を選ぶ場合、一般的には偏差値を基準に決めがちですが、医学部の場合はハイレベルな戦いになり、また模試の問題と大学ごとの入試問題が違うこともあり、模試の偏差値と実際の合否が一致しない場合が多く、偏差値だけでは選べません。したがって、入試問題の難易度や出題傾向など、いろいろな条件を調べる必要があります。
[図表1]~[図表3]に、2020年度の国公立大医学部2次試験の合格最低得点率の目安を挙げました。それぞれのグラフで大学名が上のほうにあるのは比較的入試問題の易しい大学グループ、大学名が下のほうにあるのは比較的入試問題が難しい大学グループです。
横軸の目盛りは進研模試にもとづいて、ベネッセが設定した2021年度の共通テスト目標得点率です。ベネッセの場合、共通テストがセンター試験より難しくなることを考慮せずに出しているので、2020年度のセンター試験のB判定得点率ともいえます。2020年度の国公立大入試での合格最低点は、センター試験と2次試験の合計点ですから、合格最低点からセンター試験の点数を引いた残りが、2次試験で何点取れば合格最低点をクリアできるかという目安になります。
例えば、25ページの偏差値76~80のグループを集めたグラフで共通テスト目標得点率87%付近にはいくつか大学が並んでいますが、鹿児島大学の2次試験合格最低点の得点率は80.1%ですから、2次試験では得点率85%以上を目標にしなければなりません。一方、滋賀医科大学は問題が難しいため、2次試験合格最低点の得点率は47.2%と低くなっています。ですから、50%程度の得点を目指せば合格ラインに届くといえます。
京都府立医科大学は2次試験で45%程度得点できれば合格ラインに届く計算になりますが、例年どの科目も高いレベルの思考力や論述力を要する出題になっています。2020年度の英語は長文3題で約3,150単語と長く、特に第1問は約1,350単語の超長文で、内容も「国際関係論の視点から問う環境倫理」に関する論説文であり、設問も日本語や英語で内容説明をする記述問題と、難度が高いものでした。どの科目も難度が高いうえに記述量も非常に多く、制限時間内で効率良く点数を積み上げるための解答順序と時間配分もカギとなっています。
また、偏差値75以下のグループを集めたグラフの共通テストの目標得点率の低い大学でも、例えば秋田大学は、2次試験で最低80%以上の得点率が必要です。いわゆる難問はほとんど出題されません。逆に宮崎大学は45%が合格ラインになっており、出題難度が高くなっています。
このように、大学によって問題自体の難易度や問題量はもちろん、頻出分野や出題形式なども異なるので、偏差値だけを見て「入りやすそうだ」と受験大学を選ぶと、思うように得点できずに、大失敗してしまうことがよくあります。ですから、過去問や合格最低点を見て自分が対応できる大学、自分の長所を生かせて短所はあまり弱点にならない大学をどう見つけるかが重要になります。