日本の中小企業の経営が思わしくないことは客観的なデータからも明らかです。業績不振の根本的な原因は高すぎる「労働分配率」にありました。解決策としては、人件費を削減するか、1人当たり労働生産性を高めるかのどちらかです。簡単なのは前者ですが、そもそも人材不足の中小企業で人を辞めさせずに人件費を減らそうと考えれば、給与を減らすしかありません。そんなことをしたらますます人がいなくなってしまいます。とはいえ後者を実現するにはどうすればよいのでしょうか? ここでは労働生産性を高めるのに有効な手段として、近年普及が進む「RPA」解説します。※本連載は田牧大祐氏、佐々木伸明氏の共著『中小企業経営者のための「RPA」入門』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

6つの「人の苦手な仕事」を解決

私たちは「RPAとはなにか、一言で説明してください」と言われると、「人の苦手な仕事を代わりにやってくれる技術です」と答えることにしています。

 

前回の記事『社員がすぐに辞める…「ストレスの大きい仕事」6パターン』(関連記事参照)で述べましたが、「人の苦手な仕事」とは以下のとおりです。

 

①単調な繰り返し

②誰がやっても同じ結果

③長時間続く

④深夜や休日の労働

⑤待ち時間が多く、待っている間はほかのことができない

⑥定期的だが忘れてしまう

 

なぜ人はこのような業務が苦手なのでしょうか。それは、やりがいを求め、承認されたいといった欲求があり、疲労を感じる体があるからです。単調な作業には飽きてしまいます。成果や成長が見いだせない仕事は長続きしないものです。ルールや手順が明確であれば考えずに済むため初めは楽ですが、次第に「こんな業務は自分でなくてもできる」と感じ、やらされ感を覚えるようになります。

 

誰でもいい仕事とは、言い換えれば自分の個性やセンスを発揮できない仕事です。そんな仕事にはやりがいを感じませんし、達成感もありません。毎日毎日同じことを繰り返すのは数週間、長い人なら数ヵ月ほどは耐えられますが、長期間は難しいでしょう。こういった業務が長時間しかも残業までとなると、心の病にかかる人が出てくることがあります。

 

疲労に関しては、要するに肉体的限界があるということです。単調な作業を長い時間続けていると肉体的に疲れてきます。作業スピードが遅くなり、ミスも起こします。

 

その点ロボットには心や体に関する問題はありません。パソコンのソフトウェアですから、不平不満も一切なく、停電でもしない限り、同じことを永久に繰り返せます。ミスもありませんし、疲れず、さらに賃金や福利厚生を求めず24時間365日働きます。

 

代わりに人が決めたルールや手順以外のことはできません。高度な判断や自力では成長もしません。プロセスファイルを修正すれば「成長」しますが、それはロボット自身の力ではありません。人が手を加えることによる成長です。

 

実際、RPAはパソコン上で実施する繰り返し作業や単純作業、定型作業を得意としています。

 

人の苦手な業務は、ルールや手順が明確で、都度の判断を必要とせず、正しくやれば誰がやっても同じ結果になる、繰り返されるといった特徴があります。ルールや手順が曖昧だったり、判断や責任を伴ったり、結果が人によってマチマチだったりする業務(例:デザインなど美的センスが求められる業務)は、RPAにはできません。また一度きりしかしないようなことをロボットに覚えさせてもあまり意味がありません。

 

以上のようにRPAは、前述の「人の苦手な業務」でいえば、①~⑤に該当する仕事を代行できます。

 

⑥は、RPAツールによっては解決できるものとできないものがあります。できるものは、ロボットではなく、RPAの管理機能が行います。これはスケジュール機能やトリガー機能と呼ばれるもので、条件が整ったら自動的にロボットが起動します。とても便利な機能なので導入にあたり検討したい必須事項でしょう。

 

スケジュール機能は定められた日時(平日の9時など)になったらロボットを起動するものです。またトリガー機能は、なんらかのトリガー(引き金)が引かれたら処理を始めます。例えば特定のフォルダにファイルがアップロードされたら、そのファイルを読み取って処理をするというのがトリガー機能の一例です。これは監視によるトリガー機能と呼ばれます。

 

さきほどの⑥「定期的だが忘れてしまう」仕事とは、例えば、毎日9時からであればまだしも、毎月第2月曜日の13時からと次に行うまでに日が空いてしまうと、そのこと自体を覚えているのがストレスだという人は多いと思います。メモしたり、パソコンのスケジュールに記憶させアラートを設定したりしても忘れます。実際、月に1回しかしないような仕事は忘れられがちです。

 

また、あるフォルダをずっと監視し、ファイルがそのフォルダにアップロードされたら操作するというのも人は苦手です。常時ではなく、10分おきにフォルダのなかを確認するという指示だったとしても、その作業に気をとられ、ほかの作業が手に付かなくなる場合もあります。単調な繰り返しだけでなく、待つことも人は苦手なのです。いずれもRPAを導入しトリガー機能を使えば解決します。

 

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中小企業経営者のためのRPA入門 RPA導入を成功させる方法

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田牧 大祐

佐々木 伸明

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