●政府は4日、緊急事態宣言の再発令を検討、首都圏1都3県の知事は緊急事態行動をまとめた。
●緊急事態宣言の1ヵ月の再発令は、実質GDP成長率を1年間で0.2%ポイント程度押し下げへ。
●今回の宣言は業種を絞る見通しで緩和的な金融・財政政策も継続、再発令でも株安は限定的。
政府は4日、緊急事態宣言の再発令を検討、首都圏1都3県の知事は緊急事態行動をまとめた
菅義偉首相は1月4日、年頭の記者会見で、新型コロナウイルスの感染再拡大を抑制するため、「緊急事態宣言」の再発令を検討すると述べました。対象は東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏1都3県とし、期間は1ヵ月程度を想定しているとみられます。菅首相は会見で、飲食の場における感染防止が重要との考えを明らかにしており、詳細が決まり次第、早ければ7日にも発令される見通しとなっています(図表1)。
また、首都圏1都3県の知事は同日夜、テレビ会議を開催し、「緊急事態行動」を取りまとめました。具体的には、1月8日から31日までの間、都民・県民に対し、午後8時以降の不要不急の外出自粛や、飲食店の時短営業を午後8時までに前倒すことなどを要請する方針です。なお、時短要請について、1月12日以降は、酒を提供するかしないかにかかわらず、すべての飲食店が対象となります。
緊急事態宣言の1ヵ月の再発令は、実質GDP成長率を1年間で0.2%ポイント程度押し下げへ
弊社では、日本の実質GDP成長率について、2021年は前年比+2.8%を予想していますが、首都圏1都3県に対する緊急事態宣言の再発令は、日本経済に相応の影響を及ぼすと考えられます。前回、緊急事態宣言が発令された際のケースに基づき、弊社でおおまかに推計すると、同宣言の1ヵ月間の再発令は、年間の実質GDP成長率を0.2%ポイント程度、押し下げるとみられます。
ただ、現時点での各種報道を踏まえると、今回、営業制限の要請は飲食店が中心となる見通しで、小中高校や大学の教育活動は制限されず、劇場や映画館、デパートなどの商業施設への休業要請も行われない模様です。一方、政府は国内外で人の移動を極力抑えるため、「Go To トラベル」を宣言期間中、一時停止のままとし、外国人の新規入国を事実上停止することも検討していると報じられています。
今回の宣言は業種を絞る見通しで緩和的な金融・財政政策も継続、再発令でも株安は限定的
今回、緊急事態宣言が再発令されても、業種を絞った営業制限の要請という形になれば、国内経済への影響は限定的となり、前述の弊社試算による押し下げ効果は、より小さくなると思われます。また、国内外で人の移動を効果的に抑制することができれば、感染再拡大の勢いが一服し、緊急事態宣言の期間延長や範囲拡大といった事態は避けられる公算が大きくなります。
なお、前回、緊急事態宣言が発令された際(2020年4月7日~5月25日)、2020年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率-29.2%でしたが、日経平均株価は緩和的な金融・財政政策を背景に、発令期間中11.7%上昇しました(図表2)。今回の緊急事態宣言が、前回よりもマイルドな内容となる可能性があり、緩和的な金融・財政政策が継続されていることを踏まえると、同宣言が再発令されても株安の動きは限定されるとみています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『緊急事態宣言再発令へ~日本株に与える影響を考える』を参照)。
(2021年1月5日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト