起業をしたなら「いつか上場できるくらい、大きな会社にしたい」と多くの経営者が思っていることでしょう。本連載では、IPO・上場支援で数多くの実績をあげている株式会社タスク代表取締役の竹山徹弥氏がIPOの基本や必須事項、会社上場にまつわる裏話など解説していきます。今回は変遷する株式市場に焦点をあてていきます。

2021年、日本の株式市場は再編でどうなる?

2021年には、東京証券取引所がアジアの金融市場の窓口として、より多くの投資家を呼び込むため、市場の特徴を明確にすることを目的に、株式市場の市場区分の再編を(2021年6月末日以降を基準日として)予定しており、世界中の投資家や関係者から大きな関心を集めています。

 

現在の東証一部、東証二部、JASDAQ、マザーズ市場は「プライム市場」、「スタンダード市場」、「グロース市場」に市場区分が再編されます。東証一部の会社は「プライム市場」、「スタンダード市場」に、東証二部の会社は「スタンダード市場」に、JASDAQの会社は「スタンダード市場」、「グロース市場」に、マザーズの会社は「グロース市場」に再編されます。

 

「プライム市場」
多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場。


「スタンダード市場」
公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場。


「グロース市場」
高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業及びその企業に投資をする機関投資家や一般投資家のための市場。

(株式会社東京証券取引所『新市場区分の概要等について』より抜粋)

 

筆者はIPO業界に身を置くものとして、1社でも多くの企業がIPOを経て、広範な外国人投資家に注目をされる日本の株式市場にデビューし、世界で戦える企業に成長することが、我が国の経済発展の原動力となると信じて疑いません。そのような意味でも今回の市場の再編は今後の日本の国力を海外の投資家に示す大きなトリガーとなるのではないでしょうか。

 

例えば、2020年12月16日に東証マザーズ市場に上場したバルミューダ株式会社はまさに世界で戦うために上場した企業です。寡占市場で参入が難しい白物、黒物家電業界の風雲児となっており、開発に経営資源を集中させファブレスで高い収益性を実現しています。今後は米国市場への参入も検討されており、株式上場を起点とし世界で戦う姿は、2020年を代表する新規上場を果たされた企業といえるでしょう。今後株式上場を企図されている企業にとってベンチマークとなるケースの一つと考えます。

 

一方で今回の株式市場の再編が、多くの外国人投資家を呼び込むこととなり、安心して投資いただくためには、上場会社やこれからIPOを企図している企業が、より「コーポレート・ガバナンス」を意識した経営を実践し、株主や不特定多数の投資家の期待に応えなければなりません。

 

社外取締役や監査役会、監査法人などの指摘を真摯に受け止め、上場会社としての責務を果たさなければ外国人投資家は無論のことすべての投資家の日本の株式市場への信頼を裏切ることとなります。しっかりと業績をあげることに加えて、企業統治や内部統制を担保することが上場会社として最低限持たなければならない考え方であり、今後上場を果たす企業や社長にとって、IPO準備の過程でこのあたりを十分に理解し実践することがIPOの条件となるでしょう。

 

 

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