社員は「会社名」、個人事業主は「屋号+個人名」で
領収書の記載項目の中の宛名も大切なものです。お金を支払った(負担した)のが誰かということは、経理処理をする上でも、税務署に証明する上でも重要な情報となります。
たとえば会社の経費としてお金を支払った際にもらう領収書ですが、原則として“会社名”でもらうことになります。会社によっては、部門や支店名まで指定して宛名を記載して処理するところもあります。「株式会社X xx支店」といった感じです。このような場合、決して支払った社員の個人名でもらうことはありません。
個人事業主の場合は、原則として“屋号+個人名”でもらうことが多いです。たとえば「出口秀樹税理士事務所 出口秀樹 様」という感じです。
個人事業主の場合は、屋号だけ、名前だけという領収書もありますが、お金を支払ったのが誰であるかを特定できるという点から考えると、どちらも認められます。
また、“上様領収書”は以前の記事『宛名「上様」但し書き「品代」…なぜこの領収書はNGなのか?』(関連記事参照)でも解説した通り認められないケースもありますので、避けたほうがよいでしょう。
「軽微な誤り」なら認められる可能性もあるが…
さて、宛名で問題になるのは、間違えて記載されている領収書の処理です。たとえば本来「ABC商“会”」と記載しなければならないものを「ABC商“店”」などと間違えた場合を想像してみてください。
どちらも、宛先となる名称が近いので、誰に宛てて領収書を発行したものかというのは何となく類推することができます。
領収書が有効であるかどうかの最終的な判断は税務署ということになりますが、この程度の軽微な間違いであれば認められる可能性は高いはずです。
しかし、同じようなケースで「ABC商会」を「XYZサービス」と完全に間違えた宛名である場合には、ほぼ認められないでしょう。
「二重線+訂正印」で訂正可能だが、再発行が望ましい
間違った領収書を受け取った場合には、軽微なミスであれば修正してもらうことで対応は可能です。
具体的には、間違えた箇所に二重線を引き、正しい名称を記載した上で訂正印を押印すれば訂正可能です。ただし、修正液や修正テープでの修正は認められません。
最近では、消せるボールペンいわゆるフリクションボールペンがかなり普及していますが、こちらも領収書が改ざんされる恐れがあるため、使用は避けたほうがよいでしょう。
修正も可能ですが、一般的に名称の訂正はビジネスマナーとしてはよいことではありませんし、会社内部や税務署としても好ましいものではないので、極力、再発行してもらうようにしましょう。
「日付が大幅にズレている領収書」は改ざん容疑の恐れ
領収書の記載に間違いがあるケースで、日付が間違っていることも時々みられます。
ところで、会社の経費はいつの時点で帳簿に記載され、経費として計上されるのでしょうか? 一般的には、経費精算を行った日です。
実際に支払った日から経費精算の日までの期間は、会社の内部統制上の理由もあり、それほど日数をおくことなく、なされているはずです。つまり、支払ってから精算までの日数はわずかであるということです。
そのような状況から、実際に支払った日と精算日のどちらで経理処理しても大きな違いは生じません。実務上、どちらの日で計上しても問題はないのです。ただし、自社の決算月をまたぐような日付の場合は、実際に支払った日で経理処理することが多いです。
このような会社の精算業務から考えると、日付が間違っていたとしても、間違った日付が数日の違いであれば、それほど大きな問題はなく精算され、経理処理されることになります。
問題となるのは、日付が大きく間違ってしまっている場合です。たとえば、令和2年に支払ったものの領収書の日付が令和3年になっているようなケースです。
このように将来の日付となると、そのまま経理処理するわけにもいきません。その場合、対応としては原則通り、再発行を依頼するということになります。
金額が少額で会計や税金にさほど影響がないような場合では、正しい日付を自分でメモ書きをするという方法も考えられます。日付を自分自身で修正するのではなく、余白にメモ書きするのです。これは、自分自身でメモ書きをすることで、領収書を改ざんしたと思われないための措置でもあります。
会社にとっても税務署にとっても、領収書の改ざんを見つけた場合、提出した人に対し重いペナルティを課すことになるので、あらぬ誤解を受けないためにも直接修正をするのではなく、メモ書きをしておくことをお勧めします。
出口秀樹
出口秀樹税理士事務所 所長
税理士、米国税理士(EA)
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