医師国家試験合格率と入学偏差値には乖離が?
コロナ禍のなか、最も厳しい労働態勢下で奮闘を続けているのが医療の現場だ。
そんなコロナ禍に突入していった2020年3月16日、未来の医療の現場を担うことになる精鋭たちが立ち向かった医師国家試験の合格発表が、例年通りにあった。コロナ禍だったため、合格発表は厚生労働省のホームページに掲載され、合格者へは直接書面通知がなされた【画像「医師国家試験」大学別合格ランキング】。
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総出願者数は10,462人(新卒9,317人)。受験者数は10,140人(9,044人)。合格者数は9,341人(8,583人)。合格率は92.1%だった。2020年は、過去10年で最高の合格率だったという。2019年が過去10年で2番目の低水準の合格率89.0%だったのに比べ、今年の受験者は奮闘したと言えるだろう。
大学別合格者は自治医科大学と大阪医科大学、産業医科大学は、新卒・既卒を含めた総合合格率が100%。ついで、順天堂大学医学部の99.2%、東京医科歯科大学医学部の98.2%が続く。
新卒に限ると全体で94.9%だった(既卒は69.2%)。昨年、新卒の100%合格は、自治医科大学のみだったが、今年は、北海道大学、東京医科歯科大学、福井大学(以上国立)、和歌山県立医科大学(県立)、大阪医科大学、産業医科大学(以上私立)の6校が加わった。
自治医科大学はへき地、地域医療に力を入れるという特性上、モチベーションの高い学生が集まると言われるが、近年では、他大学でも、学生時代から、地域医療、救急医療、リハビリテーション、診断学etc. 将来のテーマを明確に持ち、目標に掲げて受験に臨む学生が増えているとも聞く。
コロナ禍であるこの年に合格した医学生の皆さんには、将来、医師として、2020年という年の医療現場の苦労を胸に刻み、医療者としての高いモチベーションでの活躍を期待したい。
さて、今回のデータに基づいて、私なりに気づいた点についていくつか述べていきたい。
そもそもの合格率についてだが、出願者、さらに受験者を制限して成績を調整している大学がどれほどあるのだろうかということは気になる。本来なら在籍学生数に対する出願者数も知りたいところだ。ちなみに、出願者数に対する受験者数の割合が90%未満だったのは、福岡大学(89.1%)、近畿大学(86.5%)、日本大学(84.4%)、川崎医科大学(81.1%)、岩手医科大(77.5%)の5大学だ。
医師国家試験の結果で毎年目を見張るのは、入学時の偏差値ランキングと医師国家試験合格ランキングに大きなかい離があるということだ。別表で入学試験時の偏差値ランキングと医師国家試験ランキングを比較してみた。
不動の最難関大学・偏差値1位の東京大学だが、医師国家試験合格総合ランキングでは63位。国公私立別ランキングでは32位だ。続く2位の京都大学はそれぞれ65位、35位。3位の大阪大学は62位、31位だ。私大の雄・4位の慶應義塾大学は20位、11位。
今回の結果で、高偏差値大学の面目を保っているのは東京医科歯科大学の医師国家試験合格総合ランキング5位、そして国公私立別ランキング1位だ。旧国立大学二期校で、東大に比べ影の薄い印象の否めなかった同大だが、自他ともに認める実力派の古豪といったところか。