「11/30~12/6のFX投資戦略」のポイント
[ポイント]
・12月の米ドル/円は経験的には、月間値幅が3円以上といった具合に大きく動きやすかった。ただ、大きく動くのはクリスマス休暇前の月半ばまでが基本。
・過去半年程度続いてきたレンジ、足元なら103.2~105.4円を、今のところの年内最後のイベントである12月16日FOMCまでに、レンジ・ブレークできるかが、年内最後の大相場があるかの最初のハードル。
12月は、米ドル/円の値幅が拡大しやすい
明日から12月に入りますが、12月の米ドル/円は経験的には比較的よく動きます。昨年まで過去10年間の12月の米ドル/円値幅平均は3.734円でした(図表1参照)。
ちなみに、今年の月間値幅平均は3.6円ですが、これはあの「コロナ・ショック」で10円以上に値幅が急拡大した3月を含んだ結果です(11月27日現在)。そんな3月を除いた過去10ヵ月の平均では2.929円なので、比較すると12月は平均的に値幅が拡大していたことがわかるでしょう。
そして、そんな12月のなかでも、今年のように米大統領選挙があった年は大幅な値幅となってきました。過去10年間で、米大統領選挙が行われたのは2012年と2016年の2回ですが、12月の米ドル/円の値幅はともに5円以上に拡大しました。4年に一度の米大統領選挙後の米ドル/円は一方向へ大きく動いてきたので、それを受けた結果だったといえます。
以上のように、12月の米ドル/円の値幅は拡大することが多く、特に米大統領選挙のあった年はそれが顕著だったわけです。ただし、12月に大相場になった場合も、大きな動きは月半ばまでというのが基本でした。
たとえば、過去10年間で12月の米ドル/円値幅トップ3は、上述のように米大統領選挙があった2012年と2016年、そして2014年でしたが、このうち2014年と2016年は、月半ばまでに12月の高安値が決まっていました。
2012年の12月は、アベノミクス円安がスタートした直後で、米ドル/円は一段高に向かい、高値は月末に記録しましたが、これは例外的な結果といえるものでした。以上からわかるのは、12月の米ドル/円は大きく動く傾向があったわけですが、それは欧米市場が薄商いになるクリスマス休暇が始まる前までが基本で、クリスマス休暇に入る月後半も大きな値動きが続くことは例外的なものだったのです。
当面の焦点となるのは?
以上をこれを踏まえて、今年の12月の為替相場の予想を考えてみましょう。
米ドル/円は過去半年程度も、90日MA(移動平均線)を上限、それを2%下回った水準を下限としたレンジ中心の小動きが続いてきました(図表2参照)。
このレンジは、足元では103.2~105.3円程度。ですから、12月大相場に向かうかは、まずこのレンジをブレークするかが最初の目安になるでしょう。
米ドル/円は、先週末までの段階で上述のレンジ内にとどまっていましたが、じつは豪ドル/米ドルなどは、米ドル/円の半年近くには及ばないものの、それでも過去2ヵ月ほど続いてきた90日MA±2%のレンジを豪ドル高・米ドル安方向にブレークしていました(図表3参照)。
ユーロ/米ドルも含め、いわゆる米ドルに対する外貨の取引、ドルストレートは、テクニカルに見ると、新たな米ドル安への動きが始まった可能性が出てきました。この米ドル安への動きが今後広がり、さらに米ドル/円にも波及するかは一つ注目されるところでしょう。
これまで見てきたことからすると、この12月の米ドル/円の値幅が、過去10年間の平均3円以上、さらに5円以上といった具合に急拡大する大相場になるかの最初のハードルは、目先的には103.2~105.3円のレンジ・ブレークでしょう。ちなみに、今年の米ドル/円の安値は101円台、そして高値は112円台なので、12月の米ドル/円の値幅が3円以上に拡大するなら、安値更新の可能性は出てくる計算になります。
すでに見てきたように、経験的には、12月の大きな値動きは、クリスマス休暇に入る12月半ばまでが基本です。例年予定されているクリスマス休暇前のイベントの最後は、年内最後の12月FOMCであり、今年は12月16日を予定しています。
以上をまとめると、12月の米ドル/円は、月半ばのFOMCまでに、足元では103.2~105.3円のレンジをブレークできるかが、この先のシナリオで小動きが続くか、それとも年初来安値更新といった大相場に向かうかを考える上での目安になるのではないでしょうか。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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