米ドル/円は6月以降緩やかな下落トレンドが展開してきました。今回も、これまでの選挙後と同様の動きが見られるのでしょうか。今回は、FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が、今後の「米ドル/円」の値動きについて予想していきます。

「11/24~11/29のFX投資戦略」のポイント

[ポイント]​

・米国株上昇トレンドと連動する形で、米ドル/円は6月以降緩やかな下落トレンドが展開。またこの下落トレンドは、90日MAを上限、それを2%下回った水準を下限としたレンジ内で上下動するといった「法則」があった。

・上述のレンジ下限トライは、おもに米国株の継続的な下落局面で見られた。以上から、米国株上昇が続き、緩やかな米ドル/円下落が続くのだろうか。米ドル/円下落加速には、米国株安の拡大が必要な可能性がある。

  

米ドル/円の下落加速には、米国株安の拡大が必要?
緩やかな米ドル/円下落は続くのか?(画像はイメージです/PIXTA)

株高トレンドと緩やかな円高トレンドの連動

先週の米ドル/円は103円台まで下落しての引けとなりました。米ドル/円は依然として小動きの印象の強い展開が続いています。ただ遠目に見ると、6月ごろから緩やかな下落トレンド(米ドル安・円高)が続いているといえそうです(図表1参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表1]米ドル/円の推移(2020年4月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

この米ドル/円に米国株、NYダウを軸反転させて重ねてみると、細かい上下動はともかく、3月の「コロナ・ショック」の株暴落が一段落した後からの株高トレンドと米ドル/円の下落トレンドがほぼ連動してきたことがわかるでしょう(図表2参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表2]米ドル/円とNYダウ(2020年4月~ 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

ところで、そんな米ドル/円の緩やかな下落トレンドには、ある「法則」がありました。それは、90日MA(移動平均線)を上限に、そして90日MAを2%下回った水準を下限にしたレンジ内で上下動するというものです(図表3参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表3]米ドル/円の90日MAからのかい離率(2020年4月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

ようするに、ここまでの米ドル/円の緩やかな下落トレンドは、米国株の上昇トレンドのなかで、90日MAを上限、それを2%下回った水準を下限としたレンジ内で上下動するといった「法則」のもとに展開したものだったのです。

 

では米国株の上昇トレンドが続き、緩やかな米ドル/円下落トレンドもこれからも続くのでしょうか。 上述の「法則」に変わりがないのであれば、米ドル/円反発は徐々に105円以上も限られ、103円割れへ下値を切り下げる見通しになります。

 

それとも、かりに米国株が下落トレンドに転換したなら、米ドル/円の下落トレンドにも変化が出てくるのでしょうか。

緩やかな円高継続か、加速か=鍵は株か

米ドル/円が90日MAを2%下回ったレンジ下限をトライしたのは、最近では9月中旬と11月初めの2回でした。この2回は、NYダウが最大1割程度下落するといった具合に、米国株の下落が継続的に展開した局面でした(図表4参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表4]米ドル/円とNYダウ (2020年8月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

そして、結果的にはこの2回とも、米国株安が一段落すると、米ドル/円の下限ブレークも未遂に終わったのでした。

 

米国株上昇トレンドのなかで展開してきた米ドル/円の緩やかな下落トレンドですが、それが加速するかどうかを決める一つの鍵は、米国株の下落がどこまで広がるかということではないでしょうか

 

ちなみに、足元の米ドル/円の90日MAは105.4円程度。それを2%下回った水準は103.3円程度といった計算になります。米国株上昇トレンドが続き、下方シフトするこのレンジ中心に上下動しながら緩やかな下落トレンドが続くのでしょうか。レンジを下方向にブレークするためには、NYダウが1割以上の下落に向かうなど株安の拡大が必要といえます。

 

では、そのような株安の拡大が起こる可能性はあるのでしょうか。このところ、株価など資産価格の下落リスクを警告する動きが一部で出てきたことなどは、少し気になるところです。

 

たとえば、FRB(米準備制度理事会)は9日公表したFSR(金融安定報告)の中で、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済的影響が今後数ヵ月で悪化した場合、資産価格がさらに打撃を受ける可能性があると警告しました。

 

同報告では、不確実性は依然として高く、景気回復の見込みが低下するか、ウイルス抑制の進展が失望的だと判明した場合、投資家のリスクセンチメントは急速に変化する可能性があるなどと警告していたのです。

 

また、G20、主要20ヵ国の首脳会議(サミット)が、21~22日に開かれましたが、一部の報道によると、それに先立ってIMF(国際通貨基金)などは新型コロナワクチン開発の進展に言及した一方で、資産価格の上昇は実体経済との乖離(かいり)を示唆しており、金融安定に脅威をもたらす可能性があるといった警告を伝えたとされます。

 

ここで「資産価格」とされているなかにはもちろん株価も入ります。つまり、「実体経済からかい離した資産価格上昇」とは、「株高はバブル」という意味ですし、投資家のセンチメントの急変で、「バブル破裂」のリスクがあるという意味でもあります。それが現実化するか否かが、米ドル/円の行方も決めるのではないでしょうか。

 

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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