「家」が財産となる時代は終わりを告げた。これから都心部でも確実に起こるニュータウンを中心とした戸建て住宅の財産価値の崩壊。日本人が「家」に抱いてきた「財産」という価値観が根底から崩れていくという。本連載は多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)から一部を抜粋し、住宅街が抱える問題と対策を明らかにします。

取り残されることで、空き家は増加している

空き家の増加が止まらない

 

全国の空き家数の増加が止まりません。

 

空き家が増加する背景についてはいくつかの点が指摘されていますが、一つは、戦後一貫して増加し続けてきた人口が、2008年を境に減少に転じ、現在では毎年20万人程度減少していることが挙げられます。そのような中で、国内では毎年100万戸近くの住宅が着工されているわけですから、量としての住宅が余ってくることは、いわば必然ということができます。

 

日本の家の7軒から8軒に1軒の割合で空き家が存在するという。(※写真はイメージです/PIXTA)
日本の家の7軒から8軒に1軒の割合で空き家が存在するという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

戦後の日本は世界のなかでも、稀に見る「人口急増国」でした。1950年の日本の人口は約8300万人。それからわずか35年後の1985年には約1億2100万人に達します。46%もの人口増加は世界でも類を見ない増加率でした(総務省統計局)。

 

豊富な労働力は日本の製造業における圧倒的な優位性をもたらす礎となりました。そして産業の基礎を担う人材の多くを地方に頼ったことから、大都市圏を中心に、住宅不足が顕在化。まずは住宅の「量的な確保」が国の大きなテーマとなったのでした。

 

この人口増の恩恵がなくなり、減少に転じたことは、これまでの「量的拡大」のみに的を絞ってきた住宅政策が大きな曲がり角に差し掛かることを意味します。しかし、一度ついたスピードはなかなか元に戻せないのと同じように、新規の住宅着工数は今でも年間約90万戸。人口減に応じて減少せず、結果として築年数の古い住宅が、マーケットから「壊されることもなく」取り残されることで、空き家は増加していきました。

 

二つ目には、人口構成の極端な高齢化です。

 

厚生労働省の調査によれば、日本の平均寿命は、2015年において、男性が80.79歳、女性が87.05歳。女性に関しては香港に次ぐ世界2位、男性についても世界4位と、日本は世界でも有数の長寿国となっています。

 

長生きできるということは結構なことなのですが、これを家という側面から見るとやや事情が異なってきます。

 

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