コロナが変えた、米国債務の様相

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米連邦準備制度理事会(FRB)の11月の金融安定性報告書では初めて気候変動リスクを取り上げるなど幅広いテーマがカバーされていますが、ここでは報告書を参考にコロナ感染拡大後の米国の債務の状況にしぼって概観します。景気後退の局面では家計の債務が拡大する傾向がありますが、今回のコロナの局面では企業の債務の拡大が見られました。

金融安定性報告書:市場の落ち着きを評価する反面、金融システムリスクは依然高い

米連邦準備制度理事会(FRB)は2020年11月9日に半期に1度発表している金融安定性報告書(報告書)を公表しました。前回(5月)レポート同様、資産価値(価格)、債務残高状況、レバレッジ、調達リスクが報告されています。足元の資産価格の改善を認識しつつも、コロナ感染が長引いた場合の金融システムへの警戒感をにじませる内容です。

どこに注目すべきか:金融安定性報告書、債務残高、企業、PPP

FRBの11月の金融安定性報告書では初めて気候変動リスクを取り上げるなど幅広いテーマがカバーされていますが、ここでは報告書を参考にコロナ感染拡大後の米国の債務の状況にしぼって概観します。景気後退の局面では家計の債務が拡大する傾向がありますが、今回のコロナの局面では企業の債務の拡大が見られました(図表1参照)。

 

四半期、期間:1980年1-3月期~2020年4-6月期、単位は対GDP比率  出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国(企業と家計)の債務対GDP比率の推移 四半期、期間:1980年1-3月期~2020年4-6月期、単位は対GDP比率
出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

まず、米国の部門別債務残高を家計と企業(非金融)について対GDP(国内総生産)比率で振り返ります(図表1参照)。同比率はパンデミック後家計部門も上昇していますが、特に企業部門で急上昇しています。これが現在の景気後退局面における債務の特色で、前回(リーマンショック)の景気後退局面では家計の債務が主役(?)であったことと対称的です。額で見ると、企業債務は20年6月末で合計が約17.6兆ドルで、家計部門の約6兆ドルを上回ります。

 

企業債務の内容を見ると、社債などが4割超を占めています。銀行借り入れは1割弱です。社債などの増加率を見ると、19年4-6月期から20年4-6月期の増加率は11.2%と過去約20年の平均の伸び率である5.6%のほぼ倍となっています。実質的なゼロ金利政策を含め、FRBによる社債の支援策全般が社債の伸びを押し上げたと見ています。

 

なお、銀行借り入れについて同様に伸びを見ると、過去1年は25.7%と、長期平均の5倍程度の伸びとなっています。この背景はFRBが中小企業の資金繰り支援にまで踏み込んだ給与保護プログラム(PPP)の効果が大きいと見られます。

 

ただ借り入れについては最近では一部返済の動きが見られると報告書は指摘しています。

 

社債について報告書では企業債務増加の要因として量について懸念を指摘すると共に、質の点にも注意を払っています。例えば、投資適格社債の格付け分布を見ると投資適格で最も低い格付け(BBB格)の割合が50%超となっており、万一格下げとなれば非投資適格債券(BBB未満)市場の混乱も想定されます。質の低下の背景となっているのがレバレッジ(資産に占める債務の割合)の上昇やインタレストカバレッジレシオ(利益が利払いをカバーする比率)の低下などがあげられます(図表2参照)。同比率の低下は金利が低下していることを踏まえれば、企業の利益の悪化が要因と見られます。

 

四半期、期間:2000年1-3月期~2020年4-6月期、利益はEBIT 出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国企業のインタレストカバレッジ比率の推移 四半期、期間:2000年1-3月期~2020年4-6月期、利益はEBIT
出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

もっとも、企業の危機対応への「備え」が手元流動性など安全性を高めたと考えられる面もあります。また、発行が増えたことで、社債の償還までの期間が1年以内など短いものの割合が低下するなどプラス面もあると評価している印象です。

 

それでも気になるのは財政政策への思惑です。特に中小企業は政策支援に依存する必要がある一方で、回復ムードの中、政策変更を模索するような動きもあり、注視が必要です。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『コロナが変えた、米国債務の様相』を参照)。

 

(2020年11月25日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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