投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、マーケットレポート・ヘッドライン。日々のマーケット情報を専門家が分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

>>>12/10(火)LIVE配信

 

米連邦準備制度理事会(FRB)の11月の金融安定性報告書では初めて気候変動リスクを取り上げるなど幅広いテーマがカバーされていますが、ここでは報告書を参考にコロナ感染拡大後の米国の債務の状況にしぼって概観します。景気後退の局面では家計の債務が拡大する傾向がありますが、今回のコロナの局面では企業の債務の拡大が見られました。

金融安定性報告書:市場の落ち着きを評価する反面、金融システムリスクは依然高い

米連邦準備制度理事会(FRB)は2020年11月9日に半期に1度発表している金融安定性報告書(報告書)を公表しました。前回(5月)レポート同様、資産価値(価格)、債務残高状況、レバレッジ、調達リスクが報告されています。足元の資産価格の改善を認識しつつも、コロナ感染が長引いた場合の金融システムへの警戒感をにじませる内容です。

どこに注目すべきか:金融安定性報告書、債務残高、企業、PPP

FRBの11月の金融安定性報告書では初めて気候変動リスクを取り上げるなど幅広いテーマがカバーされていますが、ここでは報告書を参考にコロナ感染拡大後の米国の債務の状況にしぼって概観します。景気後退の局面では家計の債務が拡大する傾向がありますが、今回のコロナの局面では企業の債務の拡大が見られました(図表1参照)。

 

四半期、期間:1980年1-3月期~2020年4-6月期、単位は対GDP比率  出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国(企業と家計)の債務対GDP比率の推移 四半期、期間:1980年1-3月期~2020年4-6月期、単位は対GDP比率
出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

まず、米国の部門別債務残高を家計と企業(非金融)について対GDP(国内総生産)比率で振り返ります(図表1参照)。同比率はパンデミック後家計部門も上昇していますが、特に企業部門で急上昇しています。これが現在の景気後退局面における債務の特色で、前回(リーマンショック)の景気後退局面では家計の債務が主役(?)であったことと対称的です。額で見ると、企業債務は20年6月末で合計が約17.6兆ドルで、家計部門の約6兆ドルを上回ります。

 

企業債務の内容を見ると、社債などが4割超を占めています。銀行借り入れは1割弱です。社債などの増加率を見ると、19年4-6月期から20年4-6月期の増加率は11.2%と過去約20年の平均の伸び率である5.6%のほぼ倍となっています。実質的なゼロ金利政策を含め、FRBによる社債の支援策全般が社債の伸びを押し上げたと見ています。

 

なお、銀行借り入れについて同様に伸びを見ると、過去1年は25.7%と、長期平均の5倍程度の伸びとなっています。この背景はFRBが中小企業の資金繰り支援にまで踏み込んだ給与保護プログラム(PPP)の効果が大きいと見られます。

 

ただ借り入れについては最近では一部返済の動きが見られると報告書は指摘しています。

 

社債について報告書では企業債務増加の要因として量について懸念を指摘すると共に、質の点にも注意を払っています。例えば、投資適格社債の格付け分布を見ると投資適格で最も低い格付け(BBB格)の割合が50%超となっており、万一格下げとなれば非投資適格債券(BBB未満)市場の混乱も想定されます。質の低下の背景となっているのがレバレッジ(資産に占める債務の割合)の上昇やインタレストカバレッジレシオ(利益が利払いをカバーする比率)の低下などがあげられます(図表2参照)。同比率の低下は金利が低下していることを踏まえれば、企業の利益の悪化が要因と見られます。

 

四半期、期間:2000年1-3月期~2020年4-6月期、利益はEBIT 出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国企業のインタレストカバレッジ比率の推移 四半期、期間:2000年1-3月期~2020年4-6月期、利益はEBIT
出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

もっとも、企業の危機対応への「備え」が手元流動性など安全性を高めたと考えられる面もあります。また、発行が増えたことで、社債の償還までの期間が1年以内など短いものの割合が低下するなどプラス面もあると評価している印象です。

 

それでも気になるのは財政政策への思惑です。特に中小企業は政策支援に依存する必要がある一方で、回復ムードの中、政策変更を模索するような動きもあり、注視が必要です。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『コロナが変えた、米国債務の様相』を参照)。

 

(2020年11月25日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録