(c) Steve Lazarides 2019

正体不明の画家・バンクシー。サザビーズオークションで自らの作品『風船と少女』が1億5000万円と高額落札された瞬間、「意図的に」本作を裁断したシュレッダー事件(2018年)で注目を集めたほか、今年の夏にはネズミを地下鉄に描く動画が大きく報道されるなど、何かと世間を騒がせている。書籍『BANKSY CAPUTURED』(KKベストセラーズ)では、謎に包まれたアーティストがその姿を初めて公開した。バンクシー研究家の第一人者、東京藝術大学大学院教授の毛利嘉孝教授が解説する。

初登場は約30年前…「正体不明アーティスト」の真相

――世間の話題を集め続けるバンクシーとは、一体どんなアーティストなのでしょうか?

 

(毛利嘉孝教授:以下、毛利)バンクシーは、時にアート・テロリストと称されます。世界各地にゲリラ的に出没しては、ストリートや壁に「落書き」したり、名だたる美術館で勝手に自分の作品を無許可で陳列したり……【記事の写真を見る】

 

パレスチナの分離壁に、穴からビーチが覗く絵を描いたと思えば、パリス・ヒルトンのフェイク・アルバムを英国のレコード・ショップで無断陳列。移民・難民問題や人種差別、政治に痛烈な批判を続けるバンクシーの正体は不明のまま、その活動は、テーマパークを批判した『ディズマランド』(2015年)、パレスチナの『世界一眺めの悪いホテル』(2017年)、難民救済ボートのプロジェクト……と幅広く、そして大規模になる一方です。

 

バンクシーがアートの世界に初めて登場したのは、今から約30年前のこと。これまでの活動は、大きく3つの時代に分けて考えることができます。

 

1990年代から2000年代初頭にかけて地元・英国のブリストルを中心として活動した「グラフィティ(落書き)・ライター」の一人だった時代。そして、立体物を作り始め、プロジェクトも手掛けるようになる2000年ごろからの「ストリート・アーティスト」としての時代。このあたりから反体制・反権力の政治的姿勢を色濃く打ち出すようになります。そして2010年ごろからの、1つの作品を作ることを越えて大掛かりなプロジェクトを次々と仕掛けるようになった時代です。

 

2001年にバンクシーがロンドンのリヴィングトン・ストリート(Rivington Street)で行った展覧会の写真。トンネルの壁に型紙を貼って、スプレーを掛けている様子が分かる。
2001年にバンクシーがロンドンのリヴィングトン・ストリート(Rivington Street)で行った展覧会の写真。トンネルの壁に型紙を貼って、スプレーを掛けている様子が分かる。(c) Steve Lazarides 2019

 

今や英国で「現代のイギリスで、歴史上、最も人気のあるアーティスト」の第1位に選ばれる国民的大スターになりました。

次ページバンクシーを写したのは「過去に訣別した右腕」だった

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    監修:Steve Lazarides
    連載解説:毛利嘉孝

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