「11/9~11/15のFX投資戦略」のポイント
[ポイント]
・米大統領選挙の勝敗が未決着の段階で、先週米ドル/円はサポートされてきた104円を割り込んできた。「大統領選挙アノマリー」からすると、これは年初来の米ドル安値101円割れを目指す可能性あり。
・ただ、先週は株高・米ドル安。これは「コロナ後」半年以上も続いた相場。そんな株高で米ドル/円が一段と下落するかは懐疑的な面も。米ドル/円一段安には株安への転換で円買い拡大が必要!?
104円を大きく割り込んだ、先週の米ドル
先週、米大統領選挙が行われましたが、ある程度予想されていたように、なかなか勝敗の決着がつかない状況が続きました。そういったなかでも、米ドル/円は、3月のいわゆる「コロナ・ショック」における乱高下の後からサポートされてきた104円を大きく割り込んできました。90日MA(移動平均線)との関係で見ると、2%以上下回ってきたことになります(図表1参照)。
ところで、前回、2016年の米大統領選挙では、選挙後に米ドル/円が、今回とは方向は逆ですが、90日MAを2%以上も上回ると、その後は基本的に2%を下回ることなく一段高に向かいました(図表2参照)。
そして、それは前々回、2012年の大統領選挙後にもおおむね該当したプライス・パターンだったのです(図表3参照)。
米大統領選挙年の米ドル/円は、選挙前まで小動きが続くものの、選挙後からとたんに一方向への大相場に「豹変」する、プライス・パターンが繰り返されてきました。
一つの目安として、小動きが続くなかで、過去3ヵ月の平均値である90日MAからのかい離率が±2%中心の小幅レンジでの推移が続き、選挙前後、それを抜けた方向に大相場が展開していました。そして、前回、前々回の米大統領選挙年の米ドル/円も、まったくそんなプライス・パターンだったわけです。
このようなプライス・パターンが繰り返されてきたことを論理的に説明するのは困難です。むしろ「論理的には説明困難ながら、結果として繰り返されてきたパターン」を「アノマリー」と呼ぶため、これは米大統領選挙年の米ドル/円アノマリーと呼ぶべきでしょう。
そんな「米大統領選挙アノマリー」からすると、今回、選挙の勝敗が未決着の段階でも、米ドル/円の90日MAからのかい離率が±2%のレンジを下抜けてきた動きは、選挙前の小動きから、米ドル/円一段安へ「豹変」が始まっている可能性があったのです。
アノマリー通りなら、今後101円割れに向かう!?
「米大統領選挙アノマリー」通り、先週からの米ドル/円104円割れが米ドル一段安の始まりであるなら、そのターゲットはいくらなのでしょうか?
「米大統領選挙アノマリー」のもう一つの特徴として、選挙後一方向へ大きく動き出した相場は、年初来の高安値のどちらかを年末までに更新するということがあります。それを参考にすると、この米ドル一段安は、3月の「コロナ・ショック」で記録した101円の米ドル安値更新に向かう動きの可能性があるのです。
余談になりますが、「アノマリー」は、前回2016年の選挙時には「未達」となりました。2016年は、大統領選挙前後で101円から118円まで米ドル/円急騰の「トランプ・ラリー」が起こったのですが、年初来米ドル高値更新には届かなかったのです。
それにしても、ほんの1ヵ月余りで約17円もの米ドル急反騰は、物凄い動きだったということで異論はないでしょう。これまでの米大統領選挙後の米ドル/円は、そんなふうにトレンドを伴った高いボラティリティーの展開を繰り返してきたのですが、そんな動きは先週から始まっている可能性があります。
米ドルは、「売られ過ぎ」懸念が強まっている
少し気になるのは、米大統領選挙後に104円割れとなった動きが、株価が急反発するなかで起こったということです。これについては、「最近は株高、リスクオンでは米ドルが売られるのが基本だから株高で米ドル/円下落になった」といった解説が一般的でした。
株高・米ドル安は、「コロナ後」確かに続いてきた流れでした。だからこそ、最近にかけての株高で、米ドルは「売られ過ぎ」懸念が強まってきているのです(図表4参照)。
それでもなお、株高、リスクオンで、米ドル売りが対円で年初来安値更新を目指す一段安をもたらすだけのエネルギーがあるのでしょうか。
過去の「アノマリー」通りに、今回の大統領選後、米ドル/円が一段安の大相場となり、年初来安値101円更新に向かうなら、鍵となるのは米国株中心に株高から株安に転換し、リスクオフで円買いが一段と拡大するか否かが目安なのではないでしょうか(図表5参照)
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吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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