弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

対立から一転「子どもには…」元夫の言い分は?

<合意成立のポイント>

 

1 ピアノレッスン費用の反映の有無

子がピアノの演奏に熱心に取り組んでいて、費用もある程度かかっていました。本ケースにおいて、ピアノを続ける費用が、将来、より高くなると予想されたので、これを養育費に反映させるかどうかが問題となりました。

 

夫(父)は、妻と対立していたため、ピアノに関する費用を養育費に反映させることを拒否していました。しかし、子がピアノ演奏の練習を継続すること自体は望んでいました。そこで、代理人同士の交渉が始まると、比較的早期に養育費に反映させることを受け入れました。次に、どのように反映させるか(養育費を計算するか)が交渉の中心となりました。

 

2 将来のピアノに関する出費の推定(特定)

両者とも、極力現時点で養育費の金額を定めて、その後の対立が生じることを避けたいと考えていました。そこで、現時点で分かる範囲で将来の支出の想定について試算を出し合いました。最初はそれぞれの試算内容が大きく違っていました。特に、将来ピアノを買い換える時期や購入するピアノの金額が大きく違っていました。

 

最終的には、ピアノの買い替え費用(購入費)は、高校生になった時の支出予想額を若干大きくすることで、買い替え費用そのものとして加算することは避けることになりました。

 

また、夫と妻とで年収に違いがあったのですが、妻側がピアノ関連費用は経済力で按分ではなく折半することを受け入れた(譲歩した)ことも夫側が合意することにつながっています。

 

子の年齢(小学生~高校生)に応じたピアノ関係費用の推定(試算)と養育費への反映の内容(計算)は次のとおりです。

 

【小学生の間】

50万円/2=25万円

25万円/12≒2.1万円

標準額9万円+ピアノ関係費用の負担2.1万円=11.1万円

 

【中学生の間】

70万円/2=35万円

35万円/12≒2.9万円

標準額9万円+ピアノ関係費用の加算2.9万円=11.9万円

 

【高校生の間】

100万円/2=50万円

50万円/12≒4.2万円

標準額11万円+ピアノ関係費用の加算4.2万円=15.2万円

次ページ元夫と元妻で決めた「最低限のルール」は…?

本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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