仕事人間、会社人間ほど、リタイア後は大変になる!?
前回の続きです。今回は、院長先生に伝えたい3つのポイントのうち、2つ目と3つ目を見ていきます。
②ハッピーリタイアできる院長には「共通点」がある
院長先生、いつごろに引退したいとお考えですか。こう問いかければ、「まだ考えたことがない」という答えが一番多いのかもしれません。これは獣医師に限ったことではなく、サラリーマンや公務員でも同じでしょう。もっと言えば、引退を考えたくないのは、日本人特有と言ってもよさそうです。
なぜ引退を考えないのか。その一番の理由は、仕事が好きで仕方がないからです。
しかしその一方で、「仕事人間、会社人間ほど、リタイア後が大変になる」のも事実です。なぜリタイア後が大変になるのかは、仕事以外にやったことがないために、やることが何もなくなるからです。「燃え尽き症候群」になるのも定年直後が多く、また、1日中何もすることがないから朝からお酒を飲んでしまって「アルコール依存症」になるのも、この定年直後の人が多いといいます。
では、ハッピーリタイアしている人はどんな人なのでしょうか。
この先生方にもある共通点がいくつかあります。後日の連載でリタイアされた先生のインタビューをご紹介しますが、それぞれの先生に共通していることでもあります。
それは、「自分の臨床の仕事に美学をもっていて、レベルを落としてまで続けたくはない」という意識をもっていることです。
たとえば、「先生いつまでやるの」と飼い主さんから問われた先生、「患者さんの名前が出てこないことを放っておくのか、大変なことだと思うか」と自らに問うた先生など、これまでと同じ診療ができなくなったことがリタイアのきっかけになった先生もいらっしゃいます。
そしてもう1つ、ハッピーリタイアできる院長の共通点は、「病院を譲渡することによって、退職金に当たるリタイア後の必要資金が得られる」という点です。
さらには、「早期にリタイアで第三者事業承継の決断をしている」ことも共通点です。
宝物である間に自分の病院を譲渡できれば、その後の人生を楽しく過ごすための資金ができることになります。
承継なら院長・飼い主・スタッフが喜ぶ「三方良し」に
③廃業リタイア以外の人生の選択肢が事業承継にはある
仕事人間、会社人間だからこそ起きてしまう悲劇を前項で述べましたが、動物病院の院長先生の場合、ご自身の引退はそのまま病院の廃業となってしまいます。東京では特に多くて、リタイアされる院長の80%が廃業してしまいます。
この廃業は、院長先生にとってはこれまでの宝物をゴミにしてしまうことになりますし、スタッフや飼い主さんにとってはまた次の病院を探さねばならない一大事になってしまいます。
院長先生、スタッフ、飼い主さん、そして地域の動物医療にとっても残念な結果になってしまうのがこの廃業ですから、「承継といういい方法がある」とできるだけ多くの院長にご理解していただきたいと思っています。
この廃業を防いで、次世代に院長先生の築かれてきた病院の財産を引き渡して行くことで、「院長先生はハッピーリタイアでき、新院長はハッピースタートとなり、そして飼い主さん、スタッフにも喜ばれる」という、「三方良し(近江商法)」につながっていくものと考えます。
事業承継では、仕事と病院と自分がどういう関係を持ちたいのか、自由に選択できることも特徴の1つです。完全リタイアして獣医師をやめてしまう先生、セミリタイアして何らかの形で病院に残る先生、そして自分がやりたい専門分野に特化する先生、また地方に移住して新規開業する先生などなど、こうした生き方の選択肢がいろいろと出てくるのが、承継でリタイアした先生方の特徴です。
承継リタイアされる先生方は、リタイア、定年を前向きに捉えておられます。世間一般には定年は人生の終着点のような捉え方なのでどうしてもマイナスに捉えがちですが、ハッピーリタイアされている先生は、新たな人生の始まりと捉えています。
定年、リタイアをプラスで捉えるか、マイナスで捉えるか、意識の持ち様が大事になってきているように思われます。それは、その後の人生が180度違ったものになるからです。
コメディアンの萩本欽一さんが72歳で大学に入学されました。「自分はもう年だから」と自分で人生の可能性を制限してしまう人と、年齢に関係なく、大学に入ったり、留学したり、新しいことを始めたりと、いくつになってもやりたいことはできると考えている人とでは、人生は変わってきて当然だと思います。
自分自身がハッピーリタイアしたければ、発想の転換をしてみることが大事ではないでしょうか。