日本の獣医師は高齢になれば8割が廃業する一方で、若手は大多数が困難な新規開業にチャレンジしています。第三者事業承継は、新規開業よりもリスクが低く、引退する獣医師・若い獣医師にとっても、顧客にとってもプラスとなります。本連載は、動物病院事業承継コンサルタントの西川芳彦氏の著書『なぜ8割の動物病院が廃業になるのか』(河出書房)の中から一部を抜粋し、動物病院の第三者事業承継のメリットをご紹介します。

大多数の病院が引き継ぐ前より売り上げが伸びている

前回に引き続き、事業承継の10のポイントについて見ていきましょう。

 

4.ベテランの先生から若い先生に引き継いでも、売り上げは落ちない

 

多くの若い先生は自分が受け継いでも、ベテランの先生の業績を上回るどころか、落ちるのではないかと思っておられますが、実際には、承継開業された大多数の新院長が「引き継ぐ前よりも業績は伸びていますね」と答えています。

 

これは、なぜでしょうか。

 

その1番の理由は、若い先生のやる気と熱意がすごいから飼い主さんは「信頼」するからです。そしてもう1つの理由は、スタッフも同時に引き継いでいる場合、以前から来ていた飼い主さんは「安心」するからです。

 

「これまで前院長先生に頼り切りになっていましたので、他の病院に行こうという気にはなれませんでした」(飼い主さんの声・相原さん)というように、飼い主さんは病院をそう簡単に替えようとはしません。

 

そして新院長になって、カルテによる新規獲得活動(DMや広告、ホームページ、口コミ)などが功を奏してくれば、患者数は前院長よりも増えることになります。

 

また、新院長は前院長がやらなかった、自分がやりたいことを持っています。

 

新たな技術や新たなサービスが加わることで、売り上げアップにつながります。

「決断できない人」の言うセリフは決まっている!?

5.承継開業がうまくいく先生は、「即決」する

 

この連載の最初に、「この承継開業はお見合い結婚と似ている」と述べたとおり、その決め手は、初めての出会いを「ご縁あり」と感じられるか否かにあります。

 

事実、承継開業を成し遂げた多くの先生方が、「その病院を引き継ぐ決心は、最初のフィーリングで決めた」と仰っておられます。いわば、一瞬の感覚で一生を決めたことになるのですが、それでも、その後に「もっといいところがあるのではないか」と気持ちは揺るがなかったと言います。

 

逆に、決断できない人の言うセリフは決まっています。

 

「そんな5000万円もの契約の決断がすぐにできるものかな」。

 

即決できる先生は、承継する病院はすでにその金額の売り上げを出している病院ですから、「何年あればその額は返済できる」と予測をしています。

 

承継後は、4で述べたように、前院長の時よりも売り上げは伸びますから、返済期間はもっと短くなります。

 

新規開業で借入金を完済して自分の病院にできるまでの期間と比べたら、はるかに短い期間でしょう。

 

その後は、自分の退職金をつくるとか、老後資金をつくるとか、またはもう1つ承継先を探すとか、自分の生涯設計が立てられるようになるのもこの承継開業のメリットと言えます。

なぜ8割の動物病院が 廃業になるのか

なぜ8割の動物病院が 廃業になるのか

西川 芳彦

河出書房

ペットを飼っている人ならしばしばお世話になる動物病院。しかし、この動物病院の8割が、院長の引退と共に廃業していることをご存知だろうか。 今の日本の獣医業界は、大多数の獣医師が引退して廃業し、大多数の獣医師が新…

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