日本の獣医師は高齢になれば8割が廃業する一方で、若手は大多数が困難な新規開業にチャレンジしています。第三者事業承継は、新規開業よりもリスクが低く、引退する獣医師・若い獣医師にとっても、顧客にとってもプラスとなります。本連載は、動物病院事業承継コンサルタントの西川芳彦氏の著書『なぜ8割の動物病院が廃業になるのか』(河出書房)の中から一部を抜粋し、動物病院の第三者事業承継のメリットをご紹介します。

譲渡金額が大きいからこそ利益も大きい

前回に引き続き、事業承継の10のポイントについて見ていきましょう。

 

6.承継で院長が提示する譲渡金額は高いわけではない

 

承継開業をした先生のなかでも、「最初は高いと思った」という人もいます。

 

しかし、院長先生が提示する譲渡金額の意味がわかってくると、「高いけれども、承継の方がよほどメリットはある」と言われます。譲渡金額が高ければ、それに見合った利益があるということです。新規開業すれば簡単に利益が上がった時代は終わったことを知らなければなりません。

 

院長先生が提示する譲渡金額が高いのにはそれなりの理由があるからです。最初に払う金額が大きければ大きいほど、利益として返って来る金額も大きい。譲渡金額が小さければ、その分、利益も小さいということです。

 

「院長先生にすれば、その譲渡金額は利益の何年分でしかない。その額で私に譲渡してくれるのだから、むしろ有難い。金額は高いけれども、自分が頑張れば、売り上げは以前よりも伸ばせる。この借金は永遠に返せないものではなく、ある期間を過ぎれば消えてなくなる。こうした点に気付くと、その金額は納得できるものになっていました」(東京都調布市:レオ動物病院 山本剛史院長)

 

譲渡金額が大きいとそれでパニックになってしまって、冷静に考えられずに、それでおしまいという人が多くいます。それで承継開業を断って、もっとリスクが高い新規開業をして苦労しているのは残念なことです。

前院長の信頼を引き継ぐからこそ銀行融資もスムーズ

7.承継開業は、資金(貯金)がなくても開業できる

 

どんな職業であったとしても、独立開業(会社設立)するとなると、必要となるのは開業資金です。たいていの場合が銀行から借り入れることで開業しますが、難しいのは、銀行の信頼がないことです。

 

今の院長先生になられている人は、銀行に日参して、信用の代わりに熱意を買ってもらって融資を受けたという人が少なくないと思います。

 

確かに新規開業の場合は、自己資金や保証人がないという理由で開業をあきらめられる方もいます。しかし、この第三者事業承継であれば、自己資金が少なくても開業できる可能性があります。ただ1つだけ条件があるのは、場所が選べないという点です。

 

なぜこんなことができるのでしょうか。

 

承継開業の先生のなかにも、「預貯金が少なかったからこの承継開業の道を選んだ」という先生がおられますが、それでも開業できるのは、「銀行の前院長に対する信頼をもこの事業承継で引き継ぐことができる」からです。

 

何十年と病院経営を続けてきた前院長先生の信頼によって、銀行はスムーズに新院長に対しても融資をしてくれます。

 

これは新規開業ではありえないことです。

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