●TOPIXの予想EPSは夏場には下げ止まり、足元で底入れしつつあるものの、回復に力強さはない。
●業種別の予想EPSをみると、33業種のうち医薬品などの4業種は、昨年末の水準を上回っている。
●ただ多くの業種で予想EPSの回復ペースは緩慢、この先は中間決算での企業の業績予想に注目。
TOPIXの予想EPSは夏場には下げ止まり、足元で底入れしつつあるものの、回復に力強さはない
予想EPS(Earnings Per Share)とは、1株当たりの予想利益のことです。一般に、最終利益の予想値を発行済み株数で割って求めることができます。たとえば、ある企業の業績が改善した場合や、もともと好調だった業績がさらに上向いた場合、その企業の最終利益は増加する公算が大きくなります。市場でそのような見方が増えれば、予想EPSは上昇し、株高につながりやすくなります。
東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは図表1の通りです。年初からしばらくは底堅い動きが続いていましたが、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したことを受け、春先以降は大きく低下しています。ただ、夏場には下げ止まり、その後は足元まで緩やかに持ち直しており、底入れしつつあるように見受けられます。それでもまだ、回復に力強さはありません。
業種別の予想EPSをみると、33業種のうち医薬品などの4業種は、昨年末の水準を上回っている
そこで次に、業種別の予想EPSの動きを確認します。具対的には、東証業種別株価指数(33業種区分)の予想EPSを用いて、33業種それぞれの予想EPSの推移を検証します。なお、予想EPSは、33業種の間で比較しやすくするため、昨年末を100として指数化します。33業種のうち、直近の10月21日時点で100を超えているのは、「医薬品」、「情報・通信業」、「証券・商品先物取引業」、「倉庫・運輸関連業」の4業種でした(図表2)。
残りの29業種の予想EPSは、依然として100を下回っており、昨年末の水準を回復していないことになります。ただ、いずれの業種も予想EPSは下げ止まっており、緩やかではあるものの、持ち直しの兆しがみられます。なお、9月に入ってようやく下げ止まったのは、「鉱業」、「パルプ・紙」、「化学」、「非鉄金属」、「機械」、「精密機器」、「陸運業」、「卸売業」、「小売業」、「サービス業」の10業種です。
ただ多くの業種で予想EPSの回復ペースは緩慢、この先は中間決算での企業の業績予想に注目
なお、予想EPSが昨年末の水準を下回る29業種のうち、直近の10月21日時点で80に達していないのは、「精密機器」、「化学」、「サービス業」、「ゴム製品」、「海運業」などの16業種で、これらはいずれもTOPIXの予想EPSの回復水準を下回ります。さらに、この16業種のうち、50に達していないのは、「鉱業」、「陸運業」、「鉄鋼」、「空運業」の4業種で、「空運業」は33業種のなかで唯一マイナスとなっています。
このように、予想EPSの推移を業種別にみると、回復の度合いにかなりの差があることが分かります。ただ、多くの業種で持ち直しのペースが緩慢なため、足元でTOPIXや日経平均株価の上値が重いのも、仕方のないことと思われます。今後、予想EPSが一段と回復するためには、企業自身による業績予想の改善が必要であり、今週から本格化する3月期決算企業の中間決算が注目されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『予想EPSの回復度合いを確認する』を参照)。
(2020年10月27日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
シニアストラテジスト