M&Aによる会社(事業)売却は、中小企業の「存続・発展」と「生産性向上」を実現する有力な武器です。本連載は、起業支援NPO、金融コンサルティング・M&A・不動産・投資教育事業会社などを多数運営する、佐々木敦也氏の最新刊『中小ベンチャー企業経営者のための“超”入門M&A』(ジャムハウス)の中から一部を抜粋し、中小ベンチャー企業経営者のための「会社(事業)の売り方」をご紹介します。
社員の雇用継続などメリットは多数
売却が成約すると、以下のようなメリット・デメリットがある。
●メリット
(1)社員の雇用が継続される。
M&Aで会社を売却した場合、よほど特殊な事情のない限り、買う会社にとって人的資源が重要な価値を持っているので、社員の雇用は継続される。なお、これはM&Aの契約に際し、文書で互いに確認することになっている。
(2)経営後継者を買い手が担うため、会社(事業)が残るので個客や取引先を継続できる。
(3)M&Aは第三者が社長になる事業承継なので、後継者問題は解決する。
(4)IPO(株式公開)しなくて多額な手取金が、創業者利益として入る。
(5)自社株式の評価額が高くても、全額現金で回収されるため、相続税の納税に困ることはない。相続税の納税ができるので、納税対策は終了する。
(6)M&Aで会社を売却した資金で、事業を第二創業できる(「シリアル・アントレプレナー」)。
(7)会社清算よりも有利に手取りをとれる。
経営方針の変更により取引先が離れることも
●デメリット(売却前に検討しておくべきこと)
(1)売却後、経営方針が変わり、顧客や取引先から取引を打ち切られる。
(2)売却後、社員に負け組的意識や買い手派遣の経営陣の対応で、中核的な人材が退職してしまう。
(3)売却後、買い手側との統合作業にエネルギーがとられ、対外的な営業力などが低下する。
以上がメリット・デメリットだが、大事なことは、売り手も買い手と同じく交渉の前から戦略を持ち、買い手が買収後にどのような経営を考え、売り手としてどう協力・協業していくかについて明確な対応を考えておくことである。
有限会社あおむしマネジメント
代表取締役
1983年 筑波大学第一学群社会学類(法律学専攻)卒。住友信託銀行(現三井住友信託銀行)、および朝日生命保険でエコノミスト、債券・為替ファンドマネージャー、朝日ライフアセットマネジメントで年金ポートフォリオマネージャー等を歴任。
2003年 既存にない経済・金融サ-ビスを目指して独立。豊富な金融経験を活かし、起業支援NPO、金融コンサルティング・不動産・M&A・投資教育事業会社などを設立、運営を行う。実績案件多数。
2014年 クラウドファンディング事業を行う一般社団法人「筑波フューチャーファンディング(TFF)」を設立、代表理事に就任。
現在、TFF運営の傍ら、クライアントにFA(ファイナンシャルアドバイザー)としてM&Aを含む幅広い財務戦略アドバイス(資金調達~資産運用)を行っている。
主な著書に、『中小ベンチャー企業経営者のための”超”入門 M&A』『次世代ファイナンス クラウドファンディングで世界を変えよう!』(以上、ジャムハウス)などがある。
【資格】
公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員
宅地建物取引士
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載中小ベンチャー企業経営者のための「会社(事業)の売り方」