新興国通貨:インドネシアルピア、最大の懸念要因は?

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インドネシア通貨、ルピアは今年前半上下に大きく変動した後、不自然にも見える横ばい、もしくは緩やかなルピア安傾向となっています。このルピアの動きは、7月の利下げ後、インドネシア中銀が政策金利を据え置いたことによりルピア安が抑制されたものと思われます。ルピア安要因は根強く、当面インドネシア中銀は通貨安抑制に配慮する姿勢が求められると思われます。​

インドネシア中銀:通貨安定を重視し、8月、9月、10月と3会合連で据え置き

インドネシア中銀は2020年10月13日に終了した金融政策会合で、市場予想通り政策金利(7日物のリバースレポ金利)を4%で据え置きました(図表1参照)。

 

日次、期間:2019年10月14日~2020年10月14日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]インドネシアルピア(対ドル)と政策金利の推移 日次、期間:2019年10月14日~2020年10月14日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

政策金利の据え置きは3会合連続となります。据え置きの理由として、インドネシア中銀は、引き続き通貨ルピアを下支えする姿勢を強調しています。インドネシアのインフレ率は低水準にもかかわらず(図表2参照)、通貨ルピアの水準は低いとして、ルピアを支える姿勢を示しました。

 

月次、期間:2017年9月(PMIは10月から)~20年9月、CPIは前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]インドネシアの製造業PMIと消費者物価指数の推移 月次、期間:2017年9月(PMIは10月から)~20年9月、CPIは前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:大規模社会制限、経常収支、国債引き受け

インドネシア通貨、ルピアは今年前半上下に大きく変動した後、不自然にも見える横ばい、もしくは緩やかなルピア安傾向となっています。このルピアの動きは、7月の利下げ後、インドネシア中銀が政策金利を据え置いたことによりルピア安が抑制されたものと思われます。ルピア安要因は根強く、当面インドネシア中銀は通貨安抑制に配慮する姿勢が求められると思われます。

 

インドネシアのインフレ率は9月の消費者物価指数(CPI)が前年比1.42%と、インドネシア中銀が指摘するように低水準です(図表2参照)。加えて、インドネシアの景気も回復は鈍く、4-6月期のGDP(国内総生産)成長率は前年同期比マイナス5.32%でした。足元の景気を9月の製造業購買担当者景気指数(PMI)で確認すると47.2と、拡大縮小の目安である50を再び下回っています(図表2参照)。

 

低水準のインフレ率と景気鈍化ながらインドネシア中銀は据え置き、為替の安定を重視しています。ルピア安を懸念させる、以下の要因に不安があるからと見られます。

 

まずはコロナ感染抑制策の不透明感です。インドネシアのジャカルタ特別州は9月中旬に再導入した大規模社会制限を「緩和」すると先日発表しました。ジャカルタでの新規感染者数に変化が見られない中での緩和に疑問があります。インドネシアのコロナ対応は過去においても(経済へ配慮するあまり)時期が不適切で、かえって景気に悪影響を与える恐れもあり、通貨にマイナス要因と思われます。

 

次に、経常赤字の改善が鈍いことです。貿易収支は輸入減少で改善するも所得収支赤字という構造問題が、インドネシアの対外ポジションをぜい弱にしている背景と見ています。

 

恐らくルピアの最大の懸念はインドネシア中銀の独立性、具体的にはインドネシア中銀法の改正と、インドネシア中銀による国債引き受け(財政赤字負担分担)を懸念しています。例えば、インドネシア与党は「通貨委員会」を設置し、中銀の政策の決定や執行への監督強化を通じて国債購入拡大を画策する動きが見られました。

 

また、インドネシアでは急拡大した財政負担の受け皿としてインドネシア中銀が今回限り、金融市場でタブーとされる国債引き受けに踏み込みました。インドネシア中銀は国債引き受け額の公表や投資家への説明など積極的に情報開示を実施しています。また国債引き受けは今回限りとしていることでルピアの安定を維持しています。しかし政治の介入が強まる兆しもあり、最大の懸念要因と見ています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新興国通貨:インドネシアルピア、最大の懸念要因は?』を参照)。

 

(2020年10月16日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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