65歳以上の4人に1人が認知症になる時代、「寝たきり」や「認知機能低下」を防ぎ、自立して健やかな老後を送ることができるよう、認知症について正しく知識を身に付けることが重要です。本連載は、医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長の梶川博氏、医学博士である森惟明氏の共書『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、認知症の原因や症状、治療法などを解説します。

「認知症」は、病名ではなく症状を指す

脳には、「記憶」というとても大事な働きがあります。認知症は、いろいろなことを「記憶する(覚える)」あるいは「記憶していることを引き出す(思い出す)」ことが難しくなる病気です。認知症は病気なのですが、病名というよりも症状(症候群)で、いろいろな病気が原因となって認知症になります。

 

詳しくいいますと、認知症とは、慢性あるいは進行性の脳疾患によって記憶、思考(理解、判断)、見当識、計算、学習、言語、感情(喜び、楽しみ)など多様な高次脳機能の障害を呈する症候群です。

 

それによって、複数の認知障害が現れ、健常者を基準とする社会生活に支障を来すようになった状態をいいます。

 

健常者を基準とする社会生活に支障を来すようになった状態を指す(画像はイメージです/PIXTA)
健常者を基準とする社会生活に支障を来すようになった状態を指す(画像はイメージです/PIXTA)

 

複数の認知障害とは、もの忘れ、行動異常(暴力、徘徊、無為など)、異常な心理状態(幻覚、妄想)、抑うつ(アパシー、無気力、感情鈍麻)などですが、原因脳疾患、障害部位や進行速度もその人ごとに異なり、認知障害の症状の現れ方も同じではありません。

 

認知症の分類や、認知症を来す疾患で、最も多いのは脳細胞がゆっくりと死んでいく変性疾患であるアルツハイマー型認知症、次いで多いのが脳血管障害(脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化症)の後遺症や合併症として起こってくる血管性認知症、3番目に多いのが変性疾患のレビー小体型認知症です。

 

その他、これらの混合型や変性疾患の前頭側頭型認知症があります。なお、脳血管障害による認知症は、当初の脳血管性認知症から血管性認知症に変更されました(脳卒中治療ガイドライン)。

「痴呆症」から「認知症」に名称変更、背景には…

認知症は、以前、「ぼけ」、「老人ボケ」、「痴呆」、「痴呆症」などといわれておりましたが、平成16年、痴呆症から認知症へと用語が変更されました。これは、表記の単なる変更ではなく、この病気の捉え方に対する変化が背景にあるものです。

 

先例として、今から46年前に書かれた、有吉佐和子氏の小説「恍惚の人」(昭和47年)があります。日本社会における高齢者の介護問題を世間に知らしめた作品ですが、「恍惚の人」はすなわち「ボケ老人」を意味した言葉として、ちょっとした流行語となり、この作品は映画化(昭和48年)もされました。この小説は今日の問題を見抜いた高齢者の「ぼけ」を先立って正面から取り上げたといっていいでしょう。

 

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