今回は、「入金」の部分の仕組み作りで会社の資金繰りを楽にする方法をお伝えします。 ※本連載は、“ナニワの人情税理士”として知られる鈴木和宏氏の著書、『中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ』(マネジメント社)の中から一部を抜粋し、「儲かる社長」が実践している資金繰りのノウハウをご紹介します。

前受金の活用で税金を合法的に「先送り」する

皆さんの会社は〝前受金〟として先にお金をもらっていますか? 会社を成長・発展させるためには、毎期、経常的に利益を出して資金繰りに余裕があることが必要です。ところで、利益がいくら出ても、売上げてから入金までの期間、つまりサイトが長いとどうなりますか?入金より先に給料や家賃など、経費を払ったり、さらに決算から2か月後に税金を払っていたりするとどうなりますか?

 

黒字であるがゆえに、資金繰りが厳しくなり、銀行の借入れが増える会社がよくあります。ここでぜひ活用しほしいのが、〝前受金〟の活用です。

 

前受金とは、売上代金の全部ないし一部を仕事が完了する前に受け取ることです。売上は、「仕事が完了したとき」または「商品を引き渡したとき」に計上することになっています。

 

つまり、仕事が完了する前、お金を受け取った時点では売上に上げなくていいのです。その時点では、法人税や消費税の税金の対象にはまったくならないということです。合法的に税金を先送りすることができるのです(お金を使う消耗品を買ったり、経費を使ったりする節税に走らなくてもいいのです)。

 

「それはわかるけれど、うちの会社では難しいわ」と弱気で言われる浪花の経営者もいます。でも諦めないでください。たとえば、新しい仕事にのみ、または新しいお客様にのみ〝前受金〟を活用するということでもいいのではないでしょうか。

 

具体的には、つぎのような条件を工夫してみることです。

 

●機械部品の販売は後払いで、機械の卸売りは前払い

 

●既存のお客様は後払いで、新規のお客様は前払い

 

●毎月(定期)のコンサル料は後払いで、単発の仕事は前払い

 

私の事務所でも、単発の仕事については一部前払いにしてもらっています。

 

前受金の金額については、仕事が完了した時点で売上に計上するので、トータルでは同じになります。しかし、資金繰りでは大きく違ってきますので、特に、創業間もない会社は、なるべく早い時期に「前受金制」を取り入れるのがよいでしょう。

 

綜合警備会社の「セコム」が、創業した当初から100%前受金でビジネスをスタートしたのは有名な話です。

回数券など資金繰りに有利な独創的ノウハウを検討

 

前受金と同様の性格を持つものに〝回数券〟の販売があります。英会話などの各種スクールやエステサロンでよく見かけますね。

 

回数券を販売した時点では、原則、前受金として計上することができ、利用した時点で、売上に計上することができます。

 

また、会員制の倉庫型小売業のコストコホールセールがいい例です。先に入ってくる会費を大量に仕入れる資金として利用し、安く商品を提供しています。こうすると資金繰りがさらによくなりますね。

 

さらに、前受金に類似したものに、フランチャイズの本部をつくり、会員から〝保証金〟を預かるという方法もあります。保証金は、あくまでも預かっているもので、退会の際には全額返却するものですから、売上に計上する必要はありません。したがって、これには税金が一切かかりません。もちろん、その預かったお金の性格は借入金と同様に債務なので、後日トラブルにならないように契約書をしっかりと作成しておくことが必要です。

 

このように、入金の部分の仕組みづくりで、会社の資金繰りを楽にすることができます。こういった独創的なノウハウがあれば、小さな組織でも、運営することができるのです。

 

中小企業でも同じことはできます。皆さんの会社も、ぜひ「前受金」「着手金」のとれる仕組みを検討してください。

本連載は、2015年12月12日刊行の書籍『中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ

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鈴木 和宏

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