今回は、会社経営における現金預金の重要性について見ていきます。※本連載は、“ナニワの人情税理士”として知られる鈴木和宏氏の著書、『中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ』(マネジメント社)の中から一部を抜粋し、「儲かる社長」が実践している資金繰りのノウハウをご紹介します。

現金預金残高が「月商の1か月」を切るケースは危険

よく社長さんから、「どのくらいの現金預金の残高があればいいですか?」「うちの会社の現在の現金預金残高は適切ですか?」と質問を受けます。私はつぎのようにアドバイスしています。最低でも、月商の1か月分の現金預金の残高は確保してください。安全圏は2か月分から3か月分ですが、1年または2年を目標として計画を立ててください。

 

会社の現金預金の残高の基準は、その会社の月商である1か月の売上として考えるのが賢明です。月商を基準とする理由は、月商1000万円の会社と月商1億円の会社では、1か月に出ていくお金の額が相当に違うからです。つまり、月商が大きい会社はそれだけ仕入代金や人件費などの費用も多額になります。しかし、月商の少ない会社はそれらの支出も少なくて済みます。

 

会社は、仕入代金や諸経費、借入金の返済を毎月の売上から行っています。また、会社はトータルで見ると月商以上の支払いはできません。

 

もし、このような仕入、諸経費、借入金の返済などの支出が、毎月の「売上金額」を上回っていたらどうなるでしょうか。当然、会社の資金はショートしてしまいます。

 

月末近くになって、資金が足りなくなるかも・・・こんな状態では頭の中がそればかりになり、いい経営はできません。売上の入金がきちんとすべて月末に入ればいいですが、そうきっちり入金があるとは限らないのです。

 

現金預金の残高が「月商の1か月」を切っているケースは非常に危険です。特に「月商の0.5か月分」を切ると倒産危険水域に入りますので、そうならないためにも早目の資金手当ての対策が必要になってきます。

 

 

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現金預金対借入金比率は「30%以上」を確保するべき

つぎに、あなたの会社は借入金残高に対して、現金預金の残高がいくらあるか把握していますか? 何度も言うようですが、銀行などの金融機関の借入金と上手に付き合っていくことが必要です。

 

金融機関と上手に付き合っているかどうかを見る指標のひとつとして、「現金預金対借入金比率」があります。これは、「銀行などの借入金の残高に対して現金預金の残高をいくら持っているか」を示す数字です。

 

「現金預金は最低でも月商の1か月分は確保してください」と先ほど書きました。当然、会社の現金預金の残高が少なくなると経営に余裕がなくなり、精神衛生上も悪くなり、資金がショートして倒産してしまう可能性もあります。そうならないためにも、余裕資金は借入をしてでも確保すべきです。

 

この、現金預金対借入金比率のひとつの目安は30%です。少なくとも借入金残高に対して30%以上の現金預金の残高は確保してください。

 

たとえば、会社で1億円の借入がある場合には3000万円以上の現金預金を確保するということです。この安全圏は50%以上です。すなわち、会社で1億円の借入金の残高がある場合には、5000万円以上の現金預金の残高を持つと非常に安心して経営に専念することができます。

 

現金預金が会社にないと話になりません。借入金の話の前に、まずは「どのくらい会社に現金預金の残高があれば安全か」、現金預金の残高と借入金の適切なバランスをよく分析して、間違った借金から正しい借金に変える!手元現金をしっかり確保して、「ええがなええがな」と儲かる社長になってください。

 

 

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本連載は、2015年12月12日刊行の書籍『中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ

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鈴木 和宏

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