どちらにしても、米国の債務増加が見込まれる

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米国には超党派の機関が長期的な米国の財政状況について予測を公表しています。非営利団体「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」の推定に基づけば21年から30年でバイデン氏の政策は債務が増える傾向が見られます。ただ、トランプ大統領の政策でも米国の債務は増加が見込まれますが、両者の債務の増え方に注目しています。​​

米債務残高:歳出増大を受け、21年度には債務残高がGDPを上回る見通し

米議会予算局(CBO)は2020年9月2日に長期見通しを公表、21会計年度(20年10月-21年9月)の連邦政府債務残高は21.9兆ドルに達すると予測、GDP(国内総生産)比では104.4%となり、20年度の同98.2%から拡大するとの見通しを示しました。また、30年度末時点の政府債務は同比率で109%と示されています。

 

一方、超党派で政策提言を行う非営利団体「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」は10月7日に米大統領選民主党候補のバイデン前副大統領とトランプ大統領の公約が実施された場合の推定値を示しました(図表1参照)。バイデン氏の場合、米国の借金は今後10年間で5.6兆ドル増える見込みであるのに対し、トランプ大統領が続投しても4.95兆ドル借金が膨らむ見通しです。

 

予想期間:2021年度~2030年度総計、予想の範囲は最小と最大で表示 出所:CRFBのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]トランプ氏とバイデン氏の政策による債務増加の推定 予想期間:2021年度~2030年度総計、予想の範囲は最小と最大で表示
出所:CRFBのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:トランプ、バイデン、減税、クリーン投資

米国には超党派の機関が長期的な米国の財政状況について予測を公表しています。CRFBの推定に基づけば21年から30年でバイデン氏の政策は債務が増える傾向が見られます(図表1参照)。ただ、トランプ大統領の政策でも米国の債務は増加が見込まれますが、両者の債務の増え方に注目しています(図表2参照)。

 

出所:CRFBのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]トランプ氏とバイデン氏の政策の内訳 出所:CRFBのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

まず、図表1の債務増加について簡単に注意を述べます。この推定をするにあたり、CRFBはトランプ、バイデン各候補の公表された政策(トランプは54項目、バイデンは政策説明)の各項目別に債務を予想し積み上げ算出したイメージです。

 

債務増加が2030年までで5兆ドル程度というのは債務の健全性指標としてよく参照される債務残高対GDP比率で示すと、30年にトランプ政策では125%、バイデン政策では128%に上昇(悪化)するとCRFBは推定しています。なお、CBOの予測する同比率が109%と低いのは、現在の法律で支出が確定しているデータを主なベースにしているためです。

 

トランプの政策は、バイデンの政策に比べ債務増加は少ないとはいえ、共に債務増加が見込まれますが、政策を項目別に見ると(図表2参照)、政策のイメージはかなり異なります。図表2の赤字、もしくはマイナスは債務の増加(黒字は増税など債務の減少)を項目別に見ると、トランプ政策は全般にバイデン政策に比べ共和党らしく支出が抑えられています。

 

バイデンの政策で支出が大きく、特にクリーンエネルギー投資を含んだインフラ投資等が約4.5兆ドルと巨額なことです。環境投資で景気と雇用を下支えする意向が示されています。

 

一方、トランプ政策では税制がマイナスとなっており、要は減税により経済活動の活力に訴える戦略です。反対にバイデンの政策では増加する歳出を富裕層と法人税の引き上げである程度相殺する意向が読み取れます。

 

なお、市場はバイデンの増税に対して拒否反応が見られましたが、多少和らいだ印象です。他のシンクタンクの予想などによると、増税開始が本格化するのはまだ先と見られるからです。インフラ投資などは段階的に進められる見込みなこともあり、当面はコロナ対応に重心が置かれそうだからです。

 

財政面からは、トランプの減税主体を選択するか、バイデンの所得再配分を選択するかが問われているようです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『どちらにしても、米国の債務増加が見込まれる』を参照)。

 

(2020年10月13日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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