「終活」という言葉が広く認知されるようになり、遺言書をはじめとした相続対策をする人が増えてきました。その際、問題となってくるのが「相続したくない親族」への対処法です。本記事では、大坪正典税理士事務所の所長・大坪正典氏が、実際にどのようなトラブルが起こっているのかを解説します。

「お金あげたら孫たちがダメになる」拒絶したものの…

孫たちは、老婦人の住まいと同じ敷地内にあったクリニックに住んでいました。クリニック内には看護師の寮などがあり、居住空間も整えられていました。そして、老婦人は夫から相続したクリニックを含めて不動産を処分しようと思い、孫たちにクリニックから出て行くように求めました。

 

しかし、2人は「ここを出て行くと住むところがなくなるので、その代わりにお金が欲しい」と祖母に向かって要求してきたのです。

 

もともと、孫たちはいい年でありながら親元を離れて働こうとせず、自活できないまま自堕落な生活を送っていました。そのため老婦人は、お金をこれ以上渡したら孫たちが完全にダメになると考えて、彼らの要求を拒絶しました。その結果、両者の間で「出て行け」「出て行かない」という応酬が延々と繰り返され、出口が見えない事態となっていたのです。

 

この老婦人も、相続がきっかけとなってまさか孫との間にトラブルが起こるなどとは夢にも思っていなかったでしょう。同じように「放蕩の孫」を抱えているような家であれば、決して他人事とはいえません。

 

■親の介護より悲惨な状態なりかねない「兄弟姉妹」の知られざるリスク

 

某週刊誌に掲載された「きょうだいはリスクか資産か」という特集記事に大反響があったそうです。

 

兄弟姉妹(きょうだい)リスクとは、たとえば引きこもり状態の兄や結婚しない妹など、「家」や「会社」等のセーフティネットを持たず、自立できない兄弟姉妹が身内に存在するリスクを意味します。こうした自立できない兄弟姉妹を、親が亡くなった後、誰が支えることになるのかが、雇用不安、非婚化が広がる日本で新たな社会問題として急浮上しているわけです。

 

実際、周囲を見渡せば、親が富裕であることに甘えて仕事にもつかず、その日暮らしの生活を送っているような兄弟姉妹がいるため、「将来、兄である自分が面倒を見なければならないかもしれない」と戦々恐々としている人も少なくないように思われます。

次ページ「親の介護」の心配に隠れる「兄弟姉妹介護」の現状
相続争いは遺言書で防ぎなさい 改訂版

相続争いは遺言書で防ぎなさい 改訂版

大坪 正典

幻冬舎メディアコンサルティング

最新事例を追加収録! 「長男だからって、あんなに財産を持っていく権利はないはずだ」 「私が親の面倒を見ていたのだから、これだけもらうのは当然よ」……。 相続をきっかけに家族同士が憎しみ合うようになるのを防ぐ…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録