たとえば、選挙予想の賭け率は、Real Clear Politicsによると、9月29日の第一回大統領候補討論会のころは、バイデン優勢が10ポイント未満にとどまっていたのが、その後は急拡大に向かい、足元では30ポイント程度といった具合に大きく広がりました(図表3参照)。
以上から、大統領選挙でのバイデン勝利の見通しが強まるなかで株高になっているように見えます。かつては、「トランプ再選なら株高、バイデン民主党政権へ交代なら株安」といった評価が一般的だったようですが、それが変わってきたということなのでしょうか。
「バイデン民主党政権誕生=株高」としてよく聞く説明は、「トリプル・ブルー(ブルーは民主党のシンボルカラー)」、大統領とともに上下両院とも民主党が過半数を占めることになると、政策決定がスムーズに進むことを好感した株高という意味です。
ただし、過去の実績を見ると、選挙前の株高は現職大統領に有利に働いてきました(図表4参照)。
前回、2016年の大統領選挙も、下馬評ではヒラリー候補が勝利し、民主党政権が継続するとの見方が圧倒的に多い状況が続きましたが、結果的には株価の回復が鈍いなかで、歴史的大逆転のトランプ共和党への政権交代となりました。
そのような株価と大統領選挙の関係が今回も変わらないのであれば、バイデン民主党優勢を好感したとされる株高が、またしても大逆転のトランプ再選をもたらす可能性もあるのかもしれません。
そうなった場合、株価はどう反応するのでしょうか?
前回の大統領選挙では、大逆転のトランプ勝利が、「トランプ・ショック」といった世界中の不安をひっくり返す「トランプ・ラリー」の株高、金利上昇、米ドル高となりました。今回はそれとは逆に、コロナ禍での世界の混迷に一層拍車をかける米国政治の大混迷として、いよいよ「トランプ・ショック」をもたらすのかもしれません。
以上のように、米大統領選挙と株価の関係は、かなり複雑な可能性があります。とくに、前回の大統領選挙の結果とマーケットの動きが、事前の予想と正反対といった歴史的「大逆転劇」を演じた記憶が残っているだけに、よりそんな気にさせるのかもしれません。
為替、とくにユーロ/米ドルなどドルストレートの行方は、そんな米大統領選挙と米国株の動向が鍵を握ることになりそうです。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
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