先週の米ドル/円は一時106円を上回ったものの、金曜日には反落し、結果的には105円台後半と、引き続き方向感の乏しい展開となりました。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は、「米大統領選挙において、民主党のバイデン候補優勢が広がったことと、(米ドルと米国株の逆相関関係が)結果的に連動した形となっている」と述べています。今回は、米大統領選挙と米国株価の関連性について解説します。

 

たとえば、選挙予想の賭け率は、Real Clear Politicsによると、9月29日の第一回大統領候補討論会のころは、バイデン優勢が10ポイント未満にとどまっていたのが、その後は急拡大に向かい、足元では30ポイント程度といった具合に大きく広がりました(図表3参照)。

 

[図表3]米大統領選挙予想の推移

 

以上から、大統領選挙でのバイデン勝利の見通しが強まるなかで株高になっているように見えます。かつては、「トランプ再選なら株高、バイデン民主党政権へ交代なら株安」といった評価が一般的だったようですが、それが変わってきたということなのでしょうか。

 

「バイデン民主党政権誕生=株高」としてよく聞く説明は、「トリプル・ブルー(ブルーは民主党のシンボルカラー)」、大統領とともに上下両院とも民主党が過半数を占めることになると、政策決定がスムーズに進むことを好感した株高という意味です。

 

ただし、過去の実績を見ると、選挙前の株高は現職大統領に有利に働いてきました(図表4参照)。

 

出所:マネックス証券が作成
[図表4]1980年以降の米大統領選挙 出所:マネックス証券が作成

 

前回、2016年の大統領選挙も、下馬評ではヒラリー候補が勝利し、民主党政権が継続するとの見方が圧倒的に多い状況が続きましたが、結果的には株価の回復が鈍いなかで、歴史的大逆転のトランプ共和党への政権交代となりました。

 

そのような株価と大統領選挙の関係が今回も変わらないのであれば、バイデン民主党優勢を好感したとされる株高が、またしても大逆転のトランプ再選をもたらす可能性もあるのかもしれません。

 

そうなった場合、株価はどう反応するのでしょうか?

 

前回の大統領選挙では、大逆転のトランプ勝利が、「トランプ・ショック」といった世界中の不安をひっくり返す「トランプ・ラリー」の株高、金利上昇、米ドル高となりました。今回はそれとは逆に、コロナ禍での世界の混迷に一層拍車をかける米国政治の大混迷として、いよいよ「トランプ・ショック」をもたらすのかもしれません。

 

以上のように、米大統領選挙と株価の関係は、かなり複雑な可能性があります。とくに、前回の大統領選挙の結果とマーケットの動きが、事前の予想と正反対といった歴史的「大逆転劇」を演じた記憶が残っているだけに、よりそんな気にさせるのかもしれません。

 

為替、とくにユーロ/米ドルなどドルストレートの行方は、そんな米大統領選挙と米国株の動向が鍵を握ることになりそうです。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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