「詐欺罪」「強盗罪」等が成立…刑法における特殊詐欺
人から現金や書画骨董、その他のいろいろな物を騙し取ったり、貸金債権その他の財産上の利益を騙して得たりした者には、刑法の「詐欺罪」が成立します。
また、「欺いた」「騙した」とまでは言えないとしても、被害者が「心身耗弱状態」、すなわち加齢等により心身が衰え、判断力が低下している状態であることに乗じて、財物を交付させたり、財産上の利益を得たりした者も同様で、「準詐欺罪」が成立します。
アポ電強盗は、暴力的に金品を奪うものですから「強盗罪」が、その際にけがをさせたり、死亡させたりした場合は、「強盗致死傷罪」が成立します。
<その他の条文>
【刑法】第236条(強盗罪)
暴行、または脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
【刑法】第240条(強盗致死傷罪)
強盗が、人を負傷させたときは無期、または6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑、または無期懲役に処する。
民法上は「購入取消」「損害賠償請求」が可能だが…
民法上は、詐欺によってなされた意思表示は取り消すことができます。例えば、価値のない壺を高価な芸術品と騙されて買い取り、売買代金を支払った場合、買うという意思表示を取り消して売買契約を解消し、それに伴う原状回復の措置として、相手に渡した代金を取り戻し、それに加えて、実際に取り戻すまでの経過期間の利息相当額などの損害賠償を請求することができます。
また、相手の詐欺行為を不法行為として、支払った代金相当額を損害として損害賠償請求することも可能です。
もっとも、損害賠償請求の訴訟を起こそうとすれば、訴状を準備しなければなりません。訴状には重要な証拠書面の写しも添付しなければならないため(民事訴訟規則第55条第2項)、証拠も自分で揃えなければなりません。さらに訴訟費用は、勝訴した場合は、相手から取れるとはいえ、訴訟に要する経費のうち、通常最も高額となる弁護士報酬は、日本では敗訴当事者の負担とされるべき訴訟費用には含まないのが一般的です。そのため勝訴しても、その分は自己負担となってしまいます。
古典的な詐欺の事例であれば、詐欺犯人を警察に捕まえてもらえば、こちらからわざわざ損害賠償請求訴訟などを起こさなくても、刑務所に行きたくない犯人が、騙し取った物を返し、その他の損害も賠償して示談にしようとしてくることも稀ではありませんでした。
しかし特殊詐欺では、背後にいる暴力団などの犯罪組織が、計画的かつ組織的に役割分担をし、いわば「職業的」に行っています。連日電話をかけ続けるので目立たないよう電話をかける拠点を海外に設けるなど、検挙を免れるためにさまざまな手段を弄しています。
そして、捕まるのは犯罪組織の中では下っ端の手先ばかりといってよく、騙し取られた現金等は、犯罪組織を通じて、手早く行き先が辿れないように隠匿されてしまいます。また、騙し取った金銭を入金した銀行口座が判明すると、凍結し、その口座にある金員を被害者に返還する手続きを取ることができるのですが、即座に出金されてしまい、実効性が上がっていないのが実情です。
なお、最近、指定暴力団員が実行行為をした場合に、所属する暴力団組長への「使用者責任」(民法715条)を認める裁判例が相次ぎました。しかし、暴力団以外は、組織の指示命令系統などの解明が必要です。
住田 裕子
弁護士(第一東京弁護士会)
NPO法人長寿安心会 代表理事
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