年をとれば誰でも身体の自由がきかなくなり、生活するにも人の助けが必要になります。そうしたことを考え、終(つい)の住みかとして安心できる住まいに移ることも、元気なうちに検討しておきたい事柄です。では、ひとり暮らしの住み替えにはどんな選択肢があるのでしょう。今回は、シニア生活文化研究所・代表理事の小谷みどり氏の著書『ひとり終活』より一部を抜粋し、選択肢の一つである「我が子の住まいの近くへの引っ越し」をご紹介します。

 

私の知り合いは、父親の死をきっかけに、リウマチで苦しむ老母を自宅に呼び寄せました。母が亡くなるまでの十余年、嫁である妻が献身的に介護をしましたが、母の死去後、知人は妻から離婚を言い出されたのです。それまで一度も一緒に暮らしたことのない姑との同居は、妻にとっても大きなストレスになっていたのでしょう。

 

また平日の昼間、子どもや孫が仕事や学校に出かけてしまい、呼び寄せられた親がひとりで家に取り残されるケースもあります。近所に知り合いがいなければ話し相手にも事欠きますし、土地勘がなければ自由に出歩くこともできません。その結果、引きこもりになったり、認知症が悪化したりする事例も報告されています。子どもが近くにいれば安心はできますが、転居後、生きがいのある生活を送れるかもあらかじめ考えておく必要があります。

転居した高齢者を支援する取り組み

呼び寄せなどで転居した高齢者を支援する取り組みには、老人クラブの「転居者をあたたかく迎える運動」があります。転居先の老人クラブが、転居前に加入していたクラブと連携し、引っ越してきた高齢者を訪ね、新しい地域に早く溶け込めるようサポートする仕組みです。

 

老人クラブの会員数は、1998(平成10)年のピーク時から25%も減少していますが、どこの市区町村にも老人クラブ連合会が設置されていますので(自治体によっては、窓口が市役所や社会福祉協議会などになっている場合があります)、連絡してみるのも一案です。


しかし新しい場所で地域交流をしたり、趣味を楽しんだりしようとするなら、いずれに
しても元気なうちに転居する必要があります。

 

また東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター)が転居の影響について研究した結果によれば、自発的に転居した高齢者は新しい環境にもすぐになじめますが、介護が必要になったり、子どもに説得されてしぶしぶ転居したりした場合は、地域交流をしたがらず、孤独感を強めている傾向があるそうです。

 

同じ呼び寄せであっても、近居や、子どもの自宅近くの介護施設などへの入居も選択肢のひとつとして考えられます。同じマンションの別の部屋や、すぐ近くのマンションに親を呼び寄せている人は、私のまわりにもちらほらいます。これまでは年に数回会う程度だったのに、親が近くに転居してきたら、一緒に食事や外出をするなど、日常的に行き来するようになったという声も多く、呼び寄せにはこうした利点もあるようです。
 

 

 

小谷みどり 

シニア生活文化研究所代表理事

 

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ひとり終活

ひとり終活

小谷 みどり

小学館

元気なうちは気兼ねの要らない自由な暮らしがいいと思っていても、ひとり暮らしの人は、将来に不安を感じることも多い。 介護が必要になったら誰が面倒を見てくれるのだろう? 万が一のとき誰にも気づいてもらえなかったら…

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