前回に引き続き、「不動産パンフレット」の見方を紹介します。今回は、理想的な不動産パンフレットについて考えていきましょう。

最も優先すべきは「住み心地」の説明のはずだが・・・

前回の続きです。

 

デベロッパーが住まいを作るメーカーだとすると、パンフレットで主張すべきことは、「立地のよい土地を手に入れました」ということも大切ですが、それより、メーカーとしての誇りである「自社独自の考えに基づいて、住み心地のよい間取りを作りました」ということが優先されるべきでしょう。

 

しかし、残念ながら実態はそうはなっていません。この現象は、裏を返せば他社と同じような居住空間しか作っていないというふうにも読み取れます。土地を買うだけでなく、人が住むための間取り、その間取りが住み心地を邪魔しないよう設計することが住宅を建てるということなのです。

 

しかし、主張なきパンフレットでわかるように、多くのデベロッパーは、資金を集め、土地を買い、設計事務所や建設会社に建物を作らせているだけで、商品企画者として独自の住み心地は創造していない

 

つまりこれらの会社は、なぜこんな間取りにしたのか、作った自分たちでさえ説明できないということなのです。

 

それでは住み心地を知りたいと熱望されるお客様に対してあまりにも不誠実です。作り手としては何よりも最初にその商品に込めた思い、目指した住まいを具体的にパンフレットやモデルルームで提示すべきです。

パンフレットとは別に図面集を作っている場合は?

筆者がパンフレットを作る場合は、『徒然草』で兼好法師が「家のつくりやうは、夏を旨とすべし」と言ったように、日本の気候、風土に合った家を目指していることをまずご理解いただき、そのための風を通すしくみや日差しをコントロールする仕掛け、湿度条件を緩やかに調整してくれる自然素材を多用し、素肌に気持ちよい空間を作ることを説明します。その他の条件などについてはその後です。

 

もちろん、立地や住環境も説明しますが、商品企画者としてはどのような住み心地を実現したいのかを知っていただくことが一番重要だと思いますし、それが「どの会社から買うか」というお客様へ明確な選択基軸を提供することなのです。

 

また、パンフレットとは別に図面集を作っている場合、たいてい、最初のページには間取り図の見方と「○○は、実際には異なる場合があります」や「変更される場合があります」などといった、小さな字の注意事項が記載されているか、何も書かれず、いきなり図面が提示されているパターンが一般的です。これも大きな疑問点です。

 

間取り図とはどんな住み心地を期待しているのかを図面として確認していただくものですから、パンフレットで謳った方針を間取り、時には設備でどのように実現したのかを知ってもらうことが図面集の最初のページの役割であり、それにより他社との明確な比較が可能となるよう作成されるべきものです。

 

検討中のマンションの住み心地が不明瞭な場合は、住み心地を表現するようなパンフレットや図面集を探し、それを軸にして間取りを比較することがもうひとつの真実を見つける手法のひとつとなるのです。

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    本連載は、2011年3月23日刊行の書籍『本物マンション購入計画』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    鈴木 雄二

    幻冬舎メディアコンサルティング

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