新型コロナウイルスの流行により、全世界で医療崩壊が相次いだ昨今、「命の線引き」という言葉も取り沙汰されるようになりました。ジレンマに苦悩する医療従事者も多く、医療現場では「医師のマネジメント」が重要になっています。そこで本記事では、愛知医科大学・内科学講座肝胆膵内科学准教授である角田圭雄氏の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、解説していきます。

 

自己を知ること(self-awareness)、他者や社会などを知ること(socialawareness)、自己を制御できること(self-management)、他者との関係を制御すること(relationshipmanagement)です(図表2)。

 

[図表2]EQを形成する4つのスキル

 

セルフコントロールに関して有名なものにマシュマロテストがあります。マシュマロテストとは、1960年代に心理学者ウォルター・ミシェル氏が4歳の子供を対象に始めた実験です。その実験の内容と、追跡調査の結果は非常に興味深いものです。

 

少し子供を試すような実験内容なのですが、4歳の子供と大人が部屋で2人きりになります。そして、テーブルの上には、お皿にのったマシュマロが1個、大人は、こう子供に言って、部屋を出ます。

 

「今から用事で部屋をあけるけど、私が戻ってくるまで待っててくれたら、ごほうびにマシュマロを2つあげるね。今すぐマシュマロを食べてもいいけど、待てない場合は、マシュマロ1つだけだよ」。

 

そして、帰ってくるまでの15分から20分ほど、子供が我慢できるかどうかを調べたテストです。

 

[図表3]マシュマロテスト

 

実験の結果は、子供ですから、2/3の子供は、目の前のマシュマロをすぐに食べてしまいました。ところが、中には、大人が帰ってくるまで耐えて、マシュマロを2つもらった子供がいたそうです。

 

我慢できた子供がいることも驚きなのですが、マシュマロテストは、その子供が大人になった時の追跡調査が、とても興味深いものになっています。マシュマロを我慢できた子供は成長してから、情緒安定性、社会性、学業の能力まで、食べてしまった子供よりも優れていたのです。ゴールマンは衝動を抑制できる力は、学校の成績や社会に出てからの社会性などすべての努力の礎になると言っています。

 

 

※本記事は連載『MBA的医療経営』を再構成したものです。

 

 

角田圭雄

愛知医科大学/内科学講座肝胆膵内科学准教授

 

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