病院経営には「織田信長を見習った人事」が必要とされるワケ

新型コロナウイルスの流行により、全世界で医療崩壊が相次いだ昨今、「命の線引き」という言葉も取り沙汰されるようになりました。ジレンマに苦悩する医療従事者も多く、医療現場では「医師のマネジメント」が重要になっています。そこで本記事では、愛知医科大学・内科学講座肝胆膵内科学准教授である角田圭雄氏の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、解説していきます。

多様な価値観を持った人材を組み合わせることが必要

近年ダイバーシティ経営という言葉がよく聞かれます。ダイバーシティとは人の多様性を意味し、ダイバーシティ経営とは“女性や外国人などを積極的に登用して組織を活性化し、企業価値を高めること”と考えられています。

 

国も女性の活躍を推進していることは皆様もご存じと思います。管理職における女性比率を上げることや、女性を過剰に優遇することがダイバーシティ経営と考えられています。

 

しかし、近年の研究によると、ダイバーシティには、2つの種類があるようです。「タスク型の人材多様性」と「デモグラフィー型人材多様性」で、「タスク型の人材多様性」はその組織のメンバーがいかに多様な教育バックグラウンド、多様な職歴、多様な経験を持っているかといった、実際の実務を行うための能力や経験を意味し、「デモグラフィー型人材多様性」とは、目に見える属性のことで、国籍、性別などに当たります。この2種類の多様性が組織のパフォーマンスに異なる影響を与えることが明らかになってきています。

 

多くの論文のメタ分析によると「タスク型の人材多様性」は組織パフォーマンスにポジティブな影響を及ぼすが、「デモグラフィー型人材多様性」は組織パフォーマンスには影響を与えず、むしろマイナスの影響を及ぼすとの報告があります(入山 章栄著『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』日経BP社)

 

したがって女性や外国人を一定の割合で登用することが、組織にとってただちに良い成果をもたらすものではないことを認識しておくべきです。

 

ある製薬会社のMRから、実力もないのに女性だからといって管理職に就くことでむしろ男性社員の士気を低下させているといった現状を聞いたことがあります。ダイバーシティ経営とは、さまざまな知識、価値観などの多様性をどう取り入れて組織全体で結果を残すかという、チームビルディングの一手法なのではないかと考えています。

 

また女性に活躍の場を与えるには女性の労働環境を改善することも重要ですが、毎晩夜遅くまで残業している男性社員の働き方改革の方がむしろ重要なのではないでしょうか?

 

男性が定時に帰宅して子育てや家事を行えば、女性の労働時間を確保できます。女性活躍の社会実現には男性労働者の労働環境を整え、ワークライフバランスを向上させることも重要だと考えます。

 

実は日本で最初のダイバーシティマネジメントを行ったのが、織田信長です。大工や、商人、そして農民出身の秀吉など、多様な人材を身分や家柄ではなく、実力で採用したわけです。信長は城下を歩きながら、人材を発掘したと言われています。織田信長を見習った人材の発掘が病院経営にも求められます。ぜひ病院管理者の立場の先生方は院内を歩き回って人材の発掘を行って下さい。

 

「織田信長」的人材発掘が求められる (画像はイメージです/PIXTA)
「織田信長」的人材発掘が求められる
(画像はイメージです/PIXTA)

 

組織の外ではなく内に優れた人材が潜んでいます。以上のように、ダイバーシティは性別や人種のみではなく、仕事に関する価値観、人生に関する価値観、家族に関する価値観の多様性を互いに認め合うことを意味します。これまでの医局制度は、同じ知識、同じ能力、同じ価値観を持った人間を大量に養成すること(金太郎あめ型人材育成と個人的に呼んでいます)に主眼を置いてきましたが、これからはグローバル視点を持ち、変化する外部環境に柔軟に対応できるダイバーシティマネジメント(絵具型人材育成と私は呼んでいます)への変換が必要です。

 

世界最古の木造建築である法隆寺の宮大工棟梁の西岡常一氏(1908-1995)は千数百年もの間いかに木造建築を維持してきたかといった問いに、個性の強い木を組み合わせて建造しているからだと答えています。素直な木は弱い、右を向く木、左を向く木もうまく組み合わせていかなければならないと言っており(西岡 常一、小川 三夫、塩野 米松著『木のいのち木のこころ―天・地・人』新潮社)、まさに絵具型人材育成が組織を強くするのです。

 

したがって病院経営においても多様な価値観を持った人材を組み合わせることが必要です。


現在の病院組織は診療科あるいは臓器別の縦割りですが、今後の病院組織の運営には横ぐしも必要です。(沼上 幹著『組織デザイン』日本経済新聞社)。組織デザインの権威である一橋大学の沼上幹教授はマトリクス構造を勧めています。

 

[図表]マトリクス組織構造(Matrix Organization Form)

 

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愛知医科大学 内科学講座肝胆膵内科学准教授

愛知医科大学内科学講座肝胆膵内科学准教授(特任)。一般社団法人日本医療戦略研究センター(J-SMARC)代表理事。医師、博士(医学)、MBA(医療経営学修士)。

1970年大阪府生まれ。1995年京都府立医科大学卒業、2002年京都府立医科大学大学院で博士号(医学)を取得。市立奈良病院消化器科部長、京都府庁知事局知事直轄組織給与厚生課健康管理医(総括)、京都府立医科大大学院医学研究科消化器内科学講師を経て2016年10月から現職。2015年英国国立ウェールズ大学経営大学院でMBA in Healthcare Management(医療経営学修士号)を取得。立命館大学医療経営研究センター客員研究員を兼任。日本肝臓学会評議員・指導医。日本消化器病学会評議員・指導医。日本医療経営実践協会医療経営士3級。

著書に『最新・C型肝炎経口薬治療マニュアル』(2016年4月、編集および共著)『症例に学ぶNASH/NAFLDの診断と治療|臨床で役立つ症例32』(2012年4月、編集および共著)、『最新!C型肝炎治療薬の使いかた』(2012年10月、編集および共著)、『見て読んでわかるNASH/NAFLD診療かかりつけ医と内科医のために』(2014年8月、編集および共著)

著者紹介

連載MBA的医療経営~目指せ!メディカルエグゼクティブ

MBA的医療経営 目指せ!! メディカルエグゼクティブ

MBA的医療経営 目指せ!! メディカルエグゼクティブ

角田 圭雄

幻冬舎メディアコンサルティング

MBAの視点から医療機関を経営するための最新知識を網羅する1冊。 病院経営は、営利を目的とした企業の経営とは多くの点で異なります。診療や看護、医療技術や医療事務などの特定分野の管理能力、そして「全体最適」の視点が必…

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