脳が疲れ情報を処理しきれなかったとき、ながら行動のとき、気持ちが焦ったときなどに、思いもよらないミスをしてしまうことがあります。ヒューマンエラーを防止するには、活動の流れを追って「要因」を見つけ出すことが重要なのです。※本記事は化学系会社にて5年間ISO規格の品質及び環境マネジメント事務局を担当していた尾﨑裕氏の書籍『ヒューマンエラー防止対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

 

その時です、製品の抜出作業を行う担当者から、製品がホッパーから出てこないという連絡が入りました。含有する水分増により粘着性が増した製品がロータリーバルブの中で詰まった様子です。

 

提供:アイシン産業株式会社
ロータリーバルブの構造提供:アイシン産業株式会社

 

あなたは、計器室の監視を他の者に頼み、抜出し担当者を伴い2人で現場に駆けつけました。問題を解消するにはロータリーバルブの中の詰まりを取り除く必要があります。上長からは動く機器の配管を外す時は、必ず動力線の元電源を切るようにと指示を受けていたのですが、それをすると夜の勤務時間内での製品抜出しが難しくなります。

 

そこで、ロータリーバルブの横に設置されているON-OFFスイッチ(機側スイッチ)の操作を抜出し担当者に指示し、自分がローターに詰まった製品を手で掻き出す作業を行うことにしました。

 

ロータリーバルブは内部に8室の空間があります。少し動かしては中の詰まりを掻き出すという操作を8回行えば、バルブの詰まりを全て掻き出すことができます。スイッチ操作をする者と掻き出す者とが声を掛け合って操作すれば、簡単に作業は終わります。

 

直ぐに作業に取り掛かり、3つ目の空間の除去を終わろうとしたときです。停止しているはずのローターが、合図を出す前に動きだしました。あなたは動くということを全く予想していなかったため、バルブ内に深く突っ込んだ手を引き抜く暇はありませんでした。

 

【検討のポイント】

通常の勤務の中にも、リスクテイキング行動を行わせる“罠”が存在します。また、関係する人、判断に関わる人の数が少なくなればなるほど、その発生確率は高くなります。

どうして事故が発生したのか

夜勤という限られた人数の中で、“スケジュール通りに作業を進める責任を1人に与えてしまった”ということが、問題の最大の原因です。たとえ夜勤であれ、問題が発生したときには、その場にいない上司に連絡を取り状況を知らせるというルールが徹底されていたなら、スケジュールが遅れる可能性があっても安全対策が取られたことでしょう。“ホウ・レン・ソウ”の徹底は、強力な防止手段になります。


“限られた人数で作業を行う状況においては、リスクテイキング行動を起こす人は、その集団の長である場合が多く見受けられ”ます。判断を下した人がその班の長である場合、指示された者は、自分の役職が低ければ低いほどその指示に逆らうことができなくなります。

 

この問題に関しては、班の中だけで解決できるものではありません。これら班を統括する立場の者が、日頃から各班の状況をよく観察し、自由に意見が言える雰囲気があるのか、ワンマンな雰囲気なのかを見ておく必要があります。

 

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