脳が疲れ情報を処理しきれなかったとき、ながら行動のとき、気持ちが焦ったときなどに、思いもよらないミスをしてしまうことがあります。ヒューマンエラーを防止するには、活動の流れを追って「要因」を見つけ出すことが重要なのです。※本記事は化学系会社にて5年間ISO規格の品質及び環境マネジメント事務局を担当していた尾﨑裕氏の書籍『ヒューマンエラー防止対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

事例:現場オペレーターが起こした「原因不明」のミス

あなたは今、現場オペレーターの後ろから操作の指示を行っています。今日は設備の大修理を終えたあとの立ち上げということで、部長を含め部内のほとんどの管理職が背後で固唾を飲んで見守っています。

 

設備の立ち上げ操作に関しては、バルブの開閉や温度・圧力などの調整は、予めコンピューターにプログラミングされているため、画面が示す工程順に並んだ操作ボタンを選択し、周りの状況を確認しながら、「許可」「不許可」の2択のうち「許可」側のボタンを押す作業だけです。

 

目の前で操作するオペレーターはまだ若く、立ち上げ作業もあまり慣れていないため、あなたが彼の教育も兼ねた指導を行っているのです。立ち上げの操作が終盤に入った段階で、あなたは、次の工程で関与するバルブの1つが“手動”で“開”の状態になっていることに気付きました。

 

本来、自動制御に関わる全てのバルブについては、自動(AUTOMATIC)状態に設定されている必要があります。問題のバルブは、今回の修理の時に“手動”に切り替えられたまま、元の状態に戻されていなかったようです。あなたは、そのことをオペレーターに指摘し、該当のバルブを選んで、そのバルブを手動で閉じたあと、自動状態に切り替えてから次の「許可」ボタンを押すように指示しました。

 

オペレーターが「ワカリマシタ」と答えたのと同時でした。該当バルブの閉止操作を行うのではなく、実行許可選択の「許可」ボタンを押してしまったのです。幸いにも緊急停止の対応が早く、これによって問題が起きることはありませんでしたが、対応が遅ければコスト的にも時間的にも、大きな損失が生まれるところでした。

 

あとで当人に確認したところ、「どうしてその操作を行ったのか、全く記憶にない」という答えでした。

 

【検討のポイント】
今回の事例は、人間の情報処理モデルの中の“⑥動作”の中で、“習慣的動作”と呼ばれる誤動作です。動作の間違いに関するエラーは、いくつかの原因パターンがあるため、発生原因がどのパターンに該当するのか慎重に見極める必要があります。

 

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