納税額の大きさで「税務調査」が決まる場合も?
相続税の税務調査が入るまでと調査後を含む、相続税の税務調査の大まかな進行の流れ
をみていきましょう。
① 相続人が市区町村に被相続人の死亡届を提出する
被相続人が亡くなったことを知った日より7日以内、国外で亡くなったときは3カ月以内に、死亡届を被相続人の死亡地および本籍地、または届け人が所在している市区町村に提出します。
② 市区町村長が所轄の税務署長に被相続人の死亡を通知する
相続税法によって、「市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失踪に関する届書を受理したときは、当該届書に記載された事項を、当該届書を受理した日の属する日の翌月末日までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない」とされています。つまり、誰かが死亡したという情報は、税務署には筒抜けです。
③ 所轄の税務署から相続人に相続税の申告案内が発送される
資産家や所得税額の高い被相続人については、税務署から相続税申告の案内が送られます。すべての課税対象者に送付されるわけではなく、案内が来なかったからといって申告をしなくてもよいわけではないので、注意が必要です。
④ 相続人が相続税の申告書を提出する
課税対象となる相続人は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に、被相続人の住所を管轄する税務署に申告書を提出します。
⑤ 税務署が税務調査の対象先を選定する
税務署内で調査の対象先を選定します。まずは機械で申告書に計算間違いがないかをチェックし、次に調査官が申告内容を確認します。過去の納税記録や収入、登記情報など、被相続人や相続人に関するあらゆる情報が、詳しく調査されます。
私の感覚では、税務署は納税者を納税額でランキングしていき、そして税額の大きい納税者から順に預金の取引明細をチェックして対象先を決めているように思います。財産総額が多ければ、特に申告漏れの疑義がなくとも、とりあえず税務調査をするという場合もあるように感じています。
税務署が調査準備で目を通す書類
⑥ 税務署が実地調査のための準備をする
税務署は、国の公的機関に関するものは基本的に入手可能です。また、生命保険会社に契約状況を確認したり、金融機関に預金の取引明細を照会したりすることも可能です。調査官は事前に、次に挙げる書類には目を通していると思われます。
・相続税の申告書
・所得税の申告書
・贈与税の申告書
・同族会社の法人税の申告書
・財産債務調書
・国外財産調書
・法定調書
・金融機関との取引履歴(被相続人のものだけでなく、親族の預金通帳の内容も3~5年分ほどは調べています)
・不動産の名寄帳
⑦ 税務署から相続人に税務調査に入る旨の通知が来る
調査官から、相続人、または申告に税理士が関わっていた場合は税理士に、税務調査に入る旨の電話があり、日程のすり合わせをします。
⑧ 実地調査
相続税の調査は多くの場合、被相続人の生前の生活拠点であった自宅で行われます。調査は午前と午後に分けて行われます。
⑨ 税務署が調査の指摘事項について、相続人に伝える
調査終了後、2〜3週間で、税務署より相続人もしくは担当の税理士に調査結果が伝えられます。申告漏れなどがあると税務署が判断した場合には、指摘事項の検討表を渡され、修正申告を勧奨されます。
修正がない場合は単に終了が伝えられます(書面で通知されます)が、税務署がそういった判断を下すことは多くありません。修正がない、つまり「申告は完ぺきでした」という内容の通知を行うことを「是認」といいます。
⑩ 修正申告する/交渉をする
明らかな申告漏れなど、納得できる指摘については納税者が自主的に修正申告しますが、それ以外は税務署と交渉します。交渉に関しては、専門家である税理士に任せたほうが良いでしょう。
納税者が修正申告に応じない場合には、税務署側が更正処分を下す場合が多いです。
⑪ 追徴税額が決定、納付する
修正申告などで決定した額の追徴課税を納税します。更正処分の結果に納得できない場合には、再調査の請求や審査請求などの不服申立てをします。修正申告した箇所は税務署の指摘に「納得」して「自主的」に行ったもの、という扱いなので、不服申立てをすることはできません。
⑫「再調査の請求」または「審査請求」する
税務署の課税処分に不服があるときは、まず最初に、(1)「処分を決定した税務署長等に対する再調査の請求」、次に(2)「国税不服審判所長に対する審査請求」を行います。ただ、改正により(1)の「再調査の請求」のステップを省くこともできるようになりました。「審査請求」の裁決にも不服がある場合には、裁判所で「訴訟」を起こします。
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