仕事のスタイルや仕事の進め方、センス、価値観は、性格と同じで自分では変えられない。しかし、場所を変えると評価は上にも下にも違ってくる。その理由は企業との「相性」が大きな要因だ。企業も個人の集合体、絶対に変えられない性格、つまり社風のようなものが確かに存在する。ここでは、「異業種」へと転職することで天職に出会えるためのノウハウを紹介する。本連載は、武元康明氏の著書『30代からの「異業種」転職成功の極意』(河出書房新社)から一部を抜粋した原稿です。

「せっかく入った会社なんだから」で納得できない

就業60年時代になると、実際に転職をする・しないにかかわらず、会社を超えた「外部からも評価される人材」になっておく必要があるというのが、私のかねてよりの持論です。そのための備えはできれば20代からしておきたい。それは内部労働市場、外部労働市場のどちらにも共通していえることです。

 

そのなかで30代──20代後半から30代後半まで幅があります──がどういう時期かというと、まさに最初のチャンスといえる時期なのです。

 

私自身が29歳で航空業界から人材ビジネスへの異業種転身をしました。その時は、もちろんまったく意識していませんでしたが、いま振り返るとジャストなタイミングだったと思います。もちろん、私に限らず多くの人が迎える〝最初の転機〟が30代です。

 

社会人経験を10年近くこなして、経験がそれなりに豊かになる。その過程でトライ・アンド・エラーもあるのですが、経験値の積み重ねにより仕事面でのデータベースがある程度でき、価値観が固まりつつある頃です。価値観が固まると自らを客観視できるようにもなる。ちょうどそんな時期だと思います。

 

一方、プライベートの面では家庭を持つ人も増えてくるでしょう。結婚、あるいは出産、子育て、といったことにも直面します。そういう意味では「責任」も増してきます。同様に会社の中でも部下を持ち、人の面倒をみることが求められ始めます。

 

それは、ひとつの「壁」と言ってもいいでしょう。そこを乗り切っていけるのかいけないのかという分かれ目でもある。個人差はあるでしょうが、30 歳から35歳というのは、そういう年齢だと思います。

 

ただ、ひとつ押さえておかなければいけないのが、人生100年時代を考えると、実はこの転機はもうちょっと後にくるかもしれないということです。人生100年、就業60年になると教育期間が少し長くなるかもしれません。そんなに急がなくてもいいのではないかと。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

いままで30歳から35歳くらいで価値観が固まっていたのが、5年ほど後ろにスライドして35歳から40歳くらいになる。将来的にはそうなる可能性もあります。したがって、ここで言う「30代」とは、社会人10年程度、年齢的には30歳から40歳とやや幅を持って読んでいただければと思います。

 

いずれにせよ、この年代は仕事でもプライベートでも、社会人になって初めて大きな「壁」に突き当たる時期だと言っていいでしょう。さぁ、それをジャンプして乗り越えられるかどうか。乗り越えられなければ、そこで転職を考えるひとつの契機になってきます。あるいは、明らかに乗り越える価値がなかったり、価値があっても乗り越えられない状況も出てきます。

 

たぶん、私たちの親の世代だったら、いまいる会社に不満があっても「頑張れ」という指導の仕方が一般的だったと思います。なんだかんだ言ってもせっかく入った会社なんだから、というのが従来の日本的な考えでした。

 

しかし、これからの時代は自分の本来持っている資質と、いまの仕事がマッチしているかどうかを見極めたうえでさまざまな選択ができます。30代はまさにその最初の見極めの年代といえるかもしれません。

 

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30代からの「異業種」転職 成功の極意

30代からの「異業種」転職 成功の極意

武本 康明

河出書房新社

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