高齢ドライバーによる事故急増は本当か?
2019年4月、東京都豊島区東池袋。当時87歳だった男性が運転する車が暴走し、母子2人が死亡、10人が負傷した自動車死傷事故は、記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。事故原因は運転手によるアクセルとブレーキの踏み間違いによるもので、加害者が元官僚で現行犯逮捕がされなかったことなどを受け、「上級国民」といった言葉も広まりました。
警視庁管区内で起こった交通事故に占める高齢者ドライバーの割合の推移をみていくと、2010年は12.7%でしたが、右肩上がりで増え続け、2019年には18.1%になりました(図表1)。
人は加齢により動体視力が低下したり、情報の同時処理が苦手になったり、瞬時の判断力が低下したりと、身体機能の変化により、ハンドルやブレーキ操作に遅れが生じます。また加齢によって認知機能も低下。警視庁によると、運転免許書更新の際に受ける認知機能検査で、75歳以上の高齢者のおよそ3%に認知症の恐れがある第1分類と判定されたといいます。
高速道路でたびたびニュースになる逆走は、瞬時の判断力、そして認知機能の低下によるもの。目的地に向かう路線とは反対入ってしまい、逆走して戻ろうとした――。通常であればそんな理由で逆走することなどありえませんが、判断力が低下している高齢者であれば、気が動転していることもあり、とんでもない行動に出てしまうことがあります。
このようなことを聞くと、「やはり、高齢ドライバーは危険」「高齢者は免許を返納すべき」と思うでしょう。被害者の声を聞く機会も多いですし、当然のことです。