日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は、「高齢者ドライバー」についてみていきます。

しかしここで疑問がひとつ。本当に高齢ドライバーによる事故は増えているのか、ということです。確かに高齢ドライバーによる事故件数が増えていることは事実です。しかし高齢化とともに、高齢者ドライバー自体が増えている事実を無視して語られていないでしょうか。

 

日本の人口の推移をみると、2010年、65歳以上の高齢者の割合は総人口に対して23.0%でした。そして2019年の高齢者の割合は28.4%で、5.4%の増加でした。先ほどの警視庁管内で起こった交通事故に占める高齢者ドライバーの割合でも5.4%増。ほぼ一致するので、近年、高齢者ドライバーの事故が急増していると、センセーショナルに取り上げるのは、少々早計であるといえるでしょう。

 

違うデータをみてみましょう。警視庁によると、2016年末の運転免許保有者数は約8,221万人。このうち,75歳以上の免許保有者数は約513万人(75歳以上の人口の1/3人)。また、75歳以上の運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数の割合は、2007年15.1件だったのが、2016年には7.7件と減少傾向にあります。また80歳以上の高齢運転手では、2007年20.9件だったのが、2016年は10.6件。こちらも減少傾向にあります。

 

出所:警視庁
[図表2]高齢者運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数の割合の推移 出所:警視庁

 

このデータをみていくと、すべての年代で減少傾向にあり、そのなかで一番件数が多いのが、16~19歳(※原動機付自転車運転者含む)で13件ほど。つまり高齢ドライバーだけが危ないわけではない、ということなのです。

 

もちろん、75歳以上ドライバーと80歳以上ドライバーを比較するだけで、件数は増えていますので、加齢によって事故が増えるというのも事実。加齢によって事故リスクも高まることは注視しなければならないことに変わりはありません。

車がないと生きていくのも難しい…地方はどうする?

「身分証明書の代わりになる運転経歴証明書を発行するので、免許を返納してください」

 

高齢ドライバー対策を考える際、車を運転する資格を高齢者から取り上げることだけが最適解といえば、そうとは言い切れません。

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