人生の大イベントであるマイホームの購入。しかし、こだわって選んだはずなのに「失敗してしまった…」と感じる人も少なくありません。特に家自体に問題はなくても、住みはじめてみて「立地」の不便さに頭を悩ませることも多いようです。そこで本記事では、マイホームの立地選びに関して、プロによる現実的な視点での具体的アドバイスを紹介します。

家を建てる場所は、その後の生活を大きく左右する

どこでマイホームを購入するのか、あるいはどこにマイホームを建築するのかによって、その後の生活は大きく変わります。例えば、交通アクセスや普段の買い物など、生活スタイルそのものがマイホームの立地によって左右されることになるからです。

 

駅やバス停など、公共交通機関に近いところにマイホームがあれば、通勤・通学はラクになるでしょう。移動の時間が少なくなれば、それだけ負担も軽減されます。また、電車やバスでよく移動するという人にとっても、駅やバス停は重要なポイントになります。

 

しかし一方で、車をよく使うという人にとっては、駅やバス停はそれほど重要ではありません。むしろ、そのような土地は値段が高くなる傾向があるため、電車やバスを使わないのであれば、無理に駅やバス停の近くで購入する必要はありません。

 

特に車社会を前提としている地方都市の場合であれば、駅やバス停の近くという立地はそれほど考慮しなくてもいいでしょう。それよりも、一人で1台の車を所有することも多いため、それだけの駐車場スペースを確保することのほうが大切です。

 

駐車場が敷地内にあれば、わざわざ遠方の駐車場を借りる必要もありません。せっかくマイホームを購入するのですから、マイカーに乗るのも自宅からのほうがいいはずです。敷地内に駐車スペースを確保できるという点も、一つの判断材料になります。

 

将来的には、お子さんが車を所有することもあるはずです。そのときに、土地がなければ敷地外の駐車場を借りなければなりません。そのように将来的な環境の変化についてもあらかじめ考慮しておけば、無駄がありません。

「小学校の近く」の土地評価が高くなる理由

お子さんがいる方にとって、保育園や幼稚園、小学校、中学校などの教育施設は、立地選びのポイントになります。なかでも小学校や中学校というものは、誰もが通うことになるために意識しておく必要があります。

 

特に小学校の近くにある物件は土地としても評価されやすいので、チェックしておいたほうがいいでしょう。お子さんを安心して学校に通わせるために、小学校の近くで家を購入したいと考える親御さんが多いのです。

 

一方、保育園や幼稚園、あるいは中学校などについても、近くにあれば便利ではありますが、土地の評価に反映されるかという点については未知数です。保育園や幼稚園には通わせないという方針の家庭もあるでしょうし、中学校であればそれなりの距離でも自転車などで通学できるためです。

 

その点、小学校であればみんな徒歩で通うことになりますし、まだ子どもが小さい親御さんはなにかと心配でしょう。だからこそ、小学校の近くで物件を購入したいという人が多くなるというわけです。資産価値という観点からも、小学校はキーワードになります。

 

地方や郊外で土地を探すのであれば、なおさら小学校を意識しておいたほうがいいでしょう。また、お子さんが小学校を卒業しても、周辺には資産価値に影響する商業施設などの生活環境が整っていることも多く、利便性が高い可能性があります。

 

学校などの教育施設については、時代背景を考えると、少子化を懸念される方がいるかもしれません。確かに日本において少子化は進んでいますが、小学校などがなくなるとは考えにくいでしょう。ですので、学校が一つのポイントになることは間違いありません。

小学校に通う6年間は、安全面への特別な配慮が必要

立地における小学校の重要性について補足するなら、やはり6年間という部分が大きく、しかもまだ幼いころから6年間という長期にわたって通うことになるので、それだけ安全に配慮しなければならないということです。

 

幼稚園であればバスの送り迎えがあります。また保育園の場合は、親御さんが送り迎えをするというのが一般的でしょう。しかし、小学校で送り迎えというのは基本的にありません。だからこそ、小学校が立地選びにおいて重要となるのです。

 

これが中学校ともなると、無理なく自転車通学ができるようになるので、多少は遠方でも問題ありません。ただ、小学校の近くには中学校があることも多いので、いずれにしても小学校を基準として考えておけば問題ないでしょう。

商業施設に加え、小学校を一つのポイントに考えておく

その他の施設としては、市役所や町役場についても、検討する材料にはなり得ます。ただこれからは、マイナンバーなどの普及によって、それら公共施設の役割も限定的になると予想されます。そうなると、土地の評価という観点からはあまり重要とはいえません。

 

もちろん、公共施設が近くにあれば安心ではあります。役所での手続きなどをスムーズに行えるので、便利ということに変わりはありません。ただ、若いうちであればそれほど利用することもありませんので、参考程度にしておくといいでしょう。

 

立地については、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、あるいはドラッグストアなどの商業施設に加えて、小学校を一つのポイントに考えておくのが基本的な選び方になります。そのうえで、好みに合わせてどんな施設があれば望ましいのかを考えてみることです。

良い点と悪い点を秤にかけ「最終的な判断」を下す

もちろん、住まいの立地には良い点もあれば悪い点もあります。例えば駅が近いところに家を建てられたとしても、人の往来が多いなどの煩わしさを感じることになります。大切なのは、良い点と悪い点を秤にかけて、最終的な判断を下すことです。

 

特に価格とのバランスについては考慮しておく必要があります。便利な土地、みんなが欲しがる土地というものは、必然的に高くなる傾向にあります。それだけの金額を支払ってでも見合うような価値があるのかということについては、よく考えておきましょう。

生活スタイルを考えて、最も便利なところを購入

ただし、立地における土地の値動きについては、それほど考慮する必要はありません。なぜなら、目まぐるしく変わるということはほとんどないからです。土地の値段というものは、バブル期のような特殊な時代でない限り、緩やかに変化します。

 

そのため、自分や家族の生活スタイルを考えたときに、最も便利なところで購入するのが一番でしょう。例えば、毎日のことである買い物環境については、検討材料に入れておくべきです。商業施設が遠ければ、それだけ買い物も大変になります。

 

買い物の主流といえば、やはりスーパーマーケットでしょう。コンビニエンスストアもありますが、どちらかというと日々の買い物を補完する役割を担っています。基本はスーパーマーケットで買い物をし、時間がないときにコンビニエンスストアを利用するイメージです。

 

そのように考えていくと、どのような立地にマイホームを購入するべきかが見えてきます。必ずしも世間で評価されている土地、つまり価格が高い土地が望ましいとは限りません。総合的に判断して、どのような場所がいいのかを検討してみてください。

どんなに景色が良くても、生活しにくい場所はNG

小学校やスーパー、コンビニの立地が土地の評価に影響を与えるということは、因果関係としてとても理解しやすいことです。その他の施設にしても、利用頻度やその重要性について考えれば、土地に対してどのような影響をおよぼすのかもイメージできるはずです。

 

では逆に、土地の評価があまり高くないところとはどういった立地になるのでしょうか。土地選びの注意点という観点から見ていきましょう。典型的な失敗例としてよくあるのは、「景色で住まいを選んでしまう」というものです。

 

例えば、夜に星空を眺めたいからという理由で、街の中心地からかなり離れたところに家を購入したとします。夜空を存分に眺めることができたり、虫の声を聞いたりなど、優雅な日々を過ごせることでしょう。ただ、生活はどうなるでしょうか。

 

住まい選びにおいて大切なのは、やはり生活です。どんなに景色が良くても、どんなに優雅な楽しみがあったとしても、生活しにくくなってしまえば本末転倒です。特に働き盛りのご主人がいる家庭であればなおさらでしょう。

 

通勤、通学、買い物など、基本的な生活がしづらい立地というのは、やはり土地の評価も低くなります。それだけ購入しやすいということもありますが、なぜ安いのかということも合わせて考えておくべきでしょう。不便なところは価格も低いのです。

 

最初のうちは景色を楽しむこともできるかもしれませんが、やがてその景色に慣れてしまうときがきます。そうなれば、生活に不便ということばかりがクローズアップされてしまうでしょう。住まいに対する自己評価が下がってしまうことになりかねません。

先を見越した「中長期的な視点」で土地選びを

また、地域によっては、天候に対する配慮も必要です。例えば山が近いところに家を購入した場合であれば、雪をはじめとする悪天候への備えも必要となるでしょう。雪かきに慣れていない人は、そのあたりの事情についてもあらかじめ確認しておくことが大切です。

 

特に雪が降ったときは、車で移動する方はチェーンが必要であったり、公共交通機関に乱れが生じたりと、いろいろなトラブルが発生する可能性があります。そのような問題についても総合的に判断して、土地選びの参考にしてください。

 

もちろん、一つの理想として暖炉が家の中にあったり、薪ストーブで暖を取るなどの楽しみを求めたりするのは悪いことではありません。大切なのは、自分たちがなにを求めているのかということと、それによって生活がどうなるのかをリアルに評価することです。

 

少なくとも、ライフラインが絶たれてしまう恐れがある場所というのは、それなりの覚悟が必要となります。災害が発生したときに、食事や水を購入することができないとなれば、日頃からの備えが欠かせなくなるでしょう。

 

だからこそ、商業施設との距離についてもあらかじめ考慮しておくことが大切です。3キロぐらいまでであれば、歩いて行くことも可能です。しかし、悪天候の中、10キロも離れた商業施設まで行くのはあまり現実的ではありません。

 

小学校についても、やはりある程度の近さを保てていなければ、いざというときに不安材料となります。マイホームというものは、数十年という長きにわたって保有するものです。短期的な視点だけでなく、ぜひ中長期的な視点で考えるようにしてください。

 

 

久水 陽介

株式会社四つ葉企画 代表取締役

 

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本連載は、2018年1月22日刊行の書籍『絶対得する!初めての一戸建て購入マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

絶対得する! 初めての一戸建て購入マニュアル

絶対得する! 初めての一戸建て購入マニュアル

久水 陽介

幻冬舎メディアコンサルティング

立地選びの基本から、お得なローン、不動産会社の裏事情、営業マンの仕掛けるワナまで生涯一度の買い物で後悔しないための必読の書。 一戸建ての購入は、多くの人にとって人生で一度の大イベント。 ところが、実際に家を買っ…

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