「私は亡くなった父と一緒に住んでいなかったから、小規模宅地等の特例は無理かな」と諦めていた方も、「家なき子特例」だったら適用できる可能性があります。今回は「家なき子特例」について解説します。※本連載は、新宿税理士事務所の税理士である坂根崇真氏が、相続税対策の基礎知識について解説します。※本記事は 「新宿相続センター」掲載の記事を転載・再編集したものです。

「家なき子特例」を使うことができる人の要件

家なき子特例を実際に適用するにあたっては、租税特別措置法を確認する必要があります。簡単に説明すると、以下の要件すべてに当てはまる人は、家なき子特例の適用を受けることができます。

 

・日本人であること(制限納税義務者のうち、日本国籍を有していない者に該当しない)

・被相続人に配偶者がいない

・被相続人と生前に同居していた相続人がいない

・相続開始前の3年間に持ち家など(持ち家・親族の家・特別な関係のある法人の持つ家)に住んでいない

・相続開始時に、取得者が住んでいる家を過去に一度も所有していたことがない

・相続する自宅を相続税の申告期限まで有している

※簡略化しているため、実際の検討にあたっては必ず条文をご確認ください。

 

次に、重要なポイントを4つ解説します。

 

①被相続人に配偶者や同居していた相続人がいないこと

被相続人に配偶者(妻・夫)がいる場合には、子どもが自宅を相続しても家なき子の特例を使えません。なぜなら、妻・夫が自宅を引き継がなければ、妻・夫が生活する場所が取られてしまう可能性があるからです。したがって、被相続人の妻・夫が存命であれば家なき子特例は使えません。

 

また、被相続人と同居していた相続人(子供など)がいた場合も同様に、家なき子特例は使えません。

 

このように、家なき子特例を適用するためには、「配偶者」または「被相続人と同居していた相続人」がいないことが条件となっています。

 

《例》

・被相続人と同居していた相続人Aと離れて暮らす相続人Bがいた場合

→相続人Aが被相続人の自宅を相続した場合、小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。相続人Bは家なき子特例を適用することができません。

 

・被相続人と同居していた相続人がなく、離れて暮らす相続人Bが被相続人の自宅を相続した場合

→相続人Bは家なき子特例を適用できる可能性があります。

 

②相続開始前の3年間持ち家などに住んでいないこと

被相続人が亡くなる前の3年間、以下の家屋に住んでいたことがない相続人が条件となっています。

 

・自分(相続人)が所有する家屋
・自分(相続人)の配偶者が所有する家屋
・近い親戚(3親等以内の親族)が所有する家屋
・自分(相続人)と特別な関係にある法人の所有する家屋

 

《例》

・被相続人が亡くなる前の3年間、賃貸アパート(第三者所有の賃貸物件)に住んでいた相続人

→家なき子特例を適用できる可能性があります。

 

・被相続人が亡くなる2年前まで、夫の親が所有していた不動産に住んでいたが、相続開始日時点では第三者所有の賃貸物件に住んでいた相続人(被相続人から見た娘)

→相続開始前の3年間(2年前まで)要件を満たさなかったため、家なき子特例は適用できません。

 

 

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