投資家が身構える「新型コロナワクチン」の承認

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トランプ米大統領が年末までに新型コロナワクチンを準備すると共和党大会で発言して以降、新型コロナワクチンに関連する動きが慌ただしくなっている。米大統領選前に新型コロナワクチンが米FDA(食品医薬品局)より緊急承認されるか定かではないが、投資家にとっては株式市場の物色対象が変わりかねないイベントなだけに、当面はリスク・コントロールが重要になるだろう。

アストラゼネカの新型コロナワクチン中断の影響は限定的

トランプ大統領が年末までに新型コロナワクチンを生産すると共和党大会で発言した翌日、そのワクチンを承認する立場のFDAは10月22日に新型コロナワクチンを審議する諮問委員会を開催すると発表した。また、その2日後にハーンFDA長官が臨床試験の最終段階前に緊急使用を許可する可能性があると言及したことが報道された。さらに、9月2日には米CDC(疾病対策センター)が全米50州と5都市の保健当局に11月初めに新型コロナワクチンの投与を始める準備を進めるよう指示したと報道された。

 

CDCが通達した新型コロナワクチン候補は、「ワクチンA」と「ワクチンB」と表記され実名は伏せてあった。しかし、新型コロナウイルスのワクチン開発・生産・供給を加速させることを目的とした「ワープスピード作戦」を統括するモンセフ・スラウイ博士は米メディアの取材に対し、このワクチンが(臨床試験の最終段階にある)モデルナとファイザーであることを認めたため、同様に臨床試験の最終段階にあったアストラゼネカが除外されていたことが明らかになった。このため、アストラゼネカの新型コロナワクチン開発が一時中断になったとはいえ、そもそもCDCが準備を進めるように指示したワクチンに含まれていなかったことから、新型コロナワクチンの緊急承認に向けたプロセスへの影響は限定的だったと言える。

大統領選挙前の緊急承認は「既定路線」か?

新型コロナワクチンに関する動きを見る限り、米国は大統領選前に新型コロナワクチンを承認する方向で調整しているように見受けられる。欧米製薬9社が新型コロナワクチン開発は安全性を優先するとの共同声明を発表したが、これは政治圧力に対するけん制もさることながら、副作用を恐れてワクチン接種率が上がらなくなることへの「危機感」があると推測される。このような状況を踏まえれば、少なくとも年内には新型コロナワクチンがFDAより緊急承認される可能性を想定すべきだろう。

 

新型コロナワクチンが緊急承認され、経済活動の再開がさらに拡大するとの見方が広がれば、これまでコロナ禍で競争上優位とされてきたGAFAMだけでなく、より幅広い景気敏感株にも投資家の注目が集まり、株式市場全体のボラティリティ(変動性)が高まる可能性がある。よって、当面は景気敏感株などにも分散投資を行うことによって、ポートフォリオ全体のリスクを抑制することが重要になるだろう。

 

2020年9月9日時点 ※「ワープスピード作戦」は新型コロナウイルスのワクチン開発・生産・供給を加速させることを目的とした米国の官民連携プロジェクト  出所:HHS(米保健福祉省)、WHO(世界保健機関)よりピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米ワープスピード作戦が支援する新型コロナワクチン 2020年9月9日時点
※「ワープスピード作戦」は新型コロナウイルスのワクチン開発・生産・供給を加速させることを目的とした米国の官民連携プロジェクト
出所:HHS(米保健福祉省)、WHO(世界保健機関)よりピクテ投信投資顧問作成

 

出所:各種報道よりピクテ投信投資顧問作成
[図表2]新型コロナワクチンに関する主な出来事 出所:各種報道よりピクテ投信投資顧問作成


 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『投資家が身構える「新型コロナワクチン」の承認』を参照)。

 

(2020年9月11日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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